48歳の春に恋をしました。裏千家の茶道教室で出会い、5年後の夏まで一方的な片思いを続けました。相手は、女優デビュー映画のために日本女性としてのたしなみや所作を学ぶために茶道教室に通っていた美しい方です。映画の舞台挨拶やトークショウなどにこまめに足を運ぶ熱心なファンの一人というのが実際のところなのですが、彼女が毎晩更新するブログを読んで感想や近況をプチメールで送るというのが私の日課になりました。ある年の秋、少しかじり始めていた短歌を贈りました。

 中秋の夜八時半天空の月を鏡に見つめ合おうよ

はたして中秋の晩の彼女のブログには、満月の写真に「きれいなお月様をみて幸せでした」というコメントが添えられていました。飛び上がらんばかりに喜んだ私の一首は、次のようなものです。

 僕だけにわかるしるしを見つけたら十万馬力の鉄腕アトム

 このようなブログとプチメールのやりとりという淡い恋は突然のブログ閉鎖であっけなく終わりをつげましたが、彼女のおかげで私の心の中にはある自信が芽生えました。
 中2始業式の朝から卒業まで、地元教育界のボスの命令で派遣されてきた新任の教務主任主導の下で行われた、教師と生徒総がかりのいじめにあった私はただでさえ多感な思春期の2年間ですっかり自信喪失して人間不信に陥ってしまい、大人になっても「自分はひとから嫌われるダメ人間なのだ」と思い込んでいました。教師としてのエリートコースを歩んできた父がボスと衝突して、私と同学年だったボスの息子と私で勝負しようと挑んだのが発端でしたが、2年3年の学級担任が父の若い頃の教え子で学級内盗難事件の濡れ衣を着せられた冤罪被害生徒だったことが、いじめに拍車をかけ、私は2年間毎日のホームルームで「死ね!」と言われ続けました。不思議なことにお二人は、私の中学卒業後まもなくに四十代半ばで命を落としましたが、、、
 そんな私に、けがれのない笑顔をふり向けて自信と勇気を与えてくれたのが、彼女だったのです。「こんなに素敵な女性から好意を示された」という体験から生まれる自信ほど強いものはないのです。
 ある日のトークショウで「どんな映画に出演したいですか?」という質問をしたら、「幼い頃から、思春期の身体の変調で挫折するまで続けたバレエの映画です」という回答をいただいたことから、クラッシックバレエに興味を持ち、生まれて初めてのバレエ公演を妻と一緒に観ました。「白鳥の湖」なのですが、舞台が燦然と輝いていて「この世にこれほど美しいものがあるのか」と大変驚き、深い感動を覚えました。以来、クラッシックバレエにとどまらず、モダンダンス、コンテンポラリーダンス、演劇と舞台芸術に関心を持つようになり、ついには3年前に自ら舞台に立ってしまったというのが、私の人生の転換点であったように思います。タイムエンジニアとしての活動、工学的時間論もはっぴぃ分布仮説も、そしてmomo・mo構想もすべてがここからはじまりました。

 源氏より恋の連鎖の千年に出会ってしまった三月二十日

と、当時の短歌が残されていますので、もう十年になるのですね。