積木崩し -32ページ目

積木崩し

SNSではできない、書きたい放題の場を作りました。
ひとり悩み相談みたいな場所になってます。
話半分でどーぞ。

外に出ると、薄い鼠色のコンクリートに濃い水玉が散りばめられていた。

一面の水玉は、次々と面積を拡大していく。
僕は、強い俄か雨が降り出したことを知る。

耳から流れるのは、ザ・ビートルズのストロベリー・フィールズ・フォーエバー。
雨音は聞こえない。

満員になった乗り合いの東大バスを横目に、僕は図書館を目指す。

早く図書館に入ろうと走るほど、その分大粒の雨は頭に腕にと打ち付ける。
研究室の机に水色の折り畳み傘を置いてきたことを、僕は悔やむ。

耳から流れるのは、椎名林檎の落日。
雨音は聞こえない。

柏の空はグレーと、群青と、ほんの少しの黄色を混ぜ合わせた色だ。

カフェテリアを通りすぎ、図書館にたどりつく。
自動ドアが開く。
湿気の纏わりつく外気を押しやって、屋内の冷たい空気が流れ出す。
不自然に乾いたエア・コンディショナーの風。

頭の腕の水分が、気化熱をひきつれ蒸発して、僕はひとつ身震いする。

耳から流れるのは、エキセントリック少年ボウイのテーマ。
思った以上にここでの研究は大変だった。
「浜田くんがなったらよかったのに」
そうつぶやいてイヤホンを外す。

図書館の窓には、さっきよりも強くなった雨が打ち付ける。
やはり雨音は聞こえない。

鼠色のコンクリートは、もはや一面濃い色になった。
やはり雨音は聞こえない。
ひさしく飲まざるままの麦酒、

わが冷蔵庫にありしを思い出して、

蹴鞠大会を見つつ其を呑もうと企み、

家に戻りて冷蔵庫を開くれば

賞味期限切れることすでにふた月と六日、

駅前の商店より得た揚芋菓子は行き場をなくし、

我、途方に暮るる。


かわいそうに
かわいそうに。
ごめん
ごめんよ。

誰かに飲まれるために生まれてきたビールは、
誰に飲まれるでもなく、
こんな僕の冷蔵庫の中で息絶えてしまった。


前に、米に虫がたかって棄てたときもそう思った。
天寿を全うさせてやれなくてごめん。と。


ものにはそれぞれ役割がある。
それを果たしてやれずに死んでゆかせてしまうのは、本当に申し訳ない。

それぞれ役割が。か。

人間に役割があるとすれば
僕に役割があるとすれば
ビールの天命を全うさせること
米の天命を全うさせること

そういった類の、ことだろうか。

そうだ、買ったままにしてあるスケッチブックに絵でも描こうか。
ランニングシューズをはいて走りにいこうか。

だってかわいそうじゃんね。
役割を果たせてないスケッチブックやランニングシューズがさ。