今度は、避難所で暮らす方々に、少しでも一息つける機会になればと、即席カフェを行うボランティアだ。
活動は、時間の経過とともに、その内容も徐々に変わってくる。
混乱が残る中、少しでも癒やしになれたらと、有名な歌手やミュージシャンたちが次々と避難所を訪れている時期だった。
力仕事とは異なり、お茶を振るまう活動では、被災された方たちと触れあう比重が一層大きくなる。
外からは見えなかった、辛い現実も見聞きした。
もう何ヶ月も、グラウンドに張られたテントで生活せざるを得ない方々の中には、ご年配の方もいた。
雨の日には地面がぬかるみ、さらに大変なことになるという。
そんなテントは、グラウンド中に、いくつも張り巡らされていた。
ある時、お茶を飲み終えた女性と目が合った。
「元気なおばちゃん」という風で、人なつこい笑顔が明るい。
お茶のお礼を言って下さり、世間話が始まりそうな雰囲気の中、女性の口から出てきた言葉は、思いがけないものだった。
「全部なくなっちゃった。どうしたらいい?」
その時気づいた。おばちゃんは、笑顔を一生懸命つくっているようだった。
笑顔だけど、おばちゃんの目が、初対面の私に必死で答えを求めているようだった。
答えを待たれている。そう感じた私は、何を言うべきか、瞬時に考えた。
でも、適当な事は言えないことも、わかっていた。
ほんの数秒だっただろうか。
おばちゃんを見つめながら、自分の人生の中で窮地に陥っていた時、どうだったかを、必死で思い起こした。
比べものにならないけれど、自分の経験の中から、真実と思えることだけ言った。
「時間はかかるかもしれないけど…ずっとこのままということはないと思うんです。
少しずつでも、状況は変わっていくと思うから…」
うまく言葉にならなかったけど、何とか励ましたかった。
その気持ちが届いたかどうかはわからないけれど、おばちゃんは笑顔で返してくれた。
被災地で「心から会話する」ということを、痛烈に意識した出来事だった。
数カ月後、町を再訪したとき、とある仮設住宅で、偶然そのおばちゃんと再会することができた。
楽しそうにお喋りしながら集会所にやってきた女性たちの中に、おばちゃんはいた。
「お元気でしたか!?」
「見ての通り!」
あの時よりも、ずっと覇気のある声と笑顔が嬉しかった。
ずっと印象に残っていた方だったから、再会してお元気な姿を見ることができて、本当に嬉しかった
ゆっくりだけど着実な変化を感じながら、何度か足を運んだ2011年。
次にボランティアで東北を再訪するのは、その3年後、2014年になる。
3年ぶりに訪れる東北は、また新たな景色で私を迎えてくれた。