羽生結弦選手のNHK杯欠場のニュースが飛び込んできた。

ここに来て…っていう悔しさは、本人もファンも計り知れないだろう。

でも、と考えた。

振り返ると、羽生くんはいつだって、困難を乗り越えてきた。そして、その都度、超人的に強くなっていった。

「困難は、乗り越えられる人にしか与えられない」

彼を見ていると、その言葉が思い浮かぶ。
欲するものが容易く手に入っていたら、今の羽生結弦はいるだろうか。
とんでもなく苦しいことも、その困難が羽生くんを強く強くしてきた。

容易く手にしたものは、容易く手からすり抜ける。
奮闘を重ねて掴み取ったものは、簡単には無くならない。その人の価値ある財産となる。

これもどこかで耳にした言葉だ。


指揮者の佐渡裕さんが、インタビューでこんなことを言っていたことがある。
佐渡さんの師であるバーンスタインや小澤先生は、黄金の世界にいる、と。
その背中に追いついたと思っても、光輝く世界にいて、追いつけない、そんなことを仰っていた。

きっと羽生くんも、そんな黄金の世界にいる人なのかな、と思った。
周りの心配や想像の及ばない世界で、生きている人。

穏やかな言葉の内側で、彼は今、静かに熱い闘志を燃やしているのかもしれない。
あの鬼気迫る表情で。