佐渡の食 俺の備忘録 椎茸をミミという | 佐渡の食と佐渡の食文化

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生まれ育った佐渡の郷土の食や素材や料理法など綴っています。昭和の頃食べた伝統的な料理や素材にまつわる家族や村の話など交えて記憶に残る景色を綴っております。
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茸のことをミミと呼ぶ地域は

能登と佐渡であるらしい

北回りの寄港地としてやはり

暮らしや方言にそんなつながりを感じる。

父や母や村のひとたちがミミというのは

主に椎茸のことで他の茸は

それぞれの名前で呼んでいた。

母方の叔父は小さいからだながら

新しいことにチャレンジし続けていたが

叔母さんを亡くしてから独りで暮らしていた。

 

高齢を心配して

東京に住んでいる姉妹が呼び寄せ

期間を決めて自宅で面倒を見ている。

 

今年帰省の折

佐渡に長女と帰ってきていたので

手土産を持って行った

とっても元気でぼうぼうになった

裏庭の草刈りをやっていた

とっても懐かしく安心した。

 

いい意味で私の父とは漁師の腕を

競っていたのかもしれない。

 

父は団体職員で遠隔地に勤務して

いるので何かと母はこの叔父夫婦に

世話になっていたようだ。

 

椎茸の原木栽培などもムラで一番初めに

やりだし試行錯誤の末

商品として出荷するまでになった。

冬に帰省した折に身が厚くなった

大きなミミを持ってきた。

 

ちょうど母親への手土産に

杉折に入った羊羹を持って帰っていたので

その杉板を何かに使おうと考えた。

 

叔父さんに日頃の感謝も込めて

夕食に誘った。

 

鱈のちり鍋の切り身を拝借

皮ごと厚切りにそぎ切りにする。

 

叔父さんのおばけミミは半分に割る

杉折羊羹の蓋をのこぎりで四枚に切る

少し濃度の高い塩水に浸しておく。

 

叔父は余り酒が強くないせいか

必ず燗冷ましを呑む

すぐに真っ赤になるが

だらしなくなることはない

とても話が面白い。

 

どうしても食べて欲しいものがあるからと

コタツを出て台所に向かう。

 

鱈とミミは酒塩をくぐらせて八分方焼き

浸しておいた杉板を布巾で拭く

板の上に焼いた鱈をミミで挟み

上火コンロで軽く焼き仕上げ

もう一枚の杉板を乗せて

板は塩水につけているので

周りが焦げるくらいでいい香りをだす。

杉板の香りがとてもいい。

そのまま皿に盛り叔父に出した

杉の香りが鱈とミミに移り

上出来、上出来。

叔父は旨い旨いと食べてくれた。

 

ミミは肉厚でしっとりしていて

旨みの汁がほとばしる。

燗酒がまたその味を際立てる。

杉香はまるで樽酒を飲んでいるかの

ように旨い。