雪の多い年の岩海苔は
質と量がとっても良い。
海の岩に生える海苔が
何故か雪の年はよく採れる。
どんな具合なのか
専門家じゃないのでわからない。
確かに雪のない年の海苔は
幅が広く厚ぼったい
風味が違うのである
よくいう大味と言えばいい。
だから令和4年の岩海苔は
期待大である
雪が積もっていると母がいう。
立春前
冬の荒波に耐えて伸びた海苔が
岩場を黒く覆う
それもびっしり
不思議なもので
岩場の場所により風味が違う。
講談社の
日本の歳時記に登場する
海府海苔
佐渡の中でも北端に面した岩礁で
手摘みされたものとして
高級な食材とある。
昭和の頃は
現金化の手段として
村の財産でもあるので
採取する時間も
採取する人数も決まっている。
潮は引いているが
荒波の中での採取なので命がけ
岩場に集まった人たちの目は
子供心に覚えてるが
血走っている。
村長の合図で海苔摘みが始まる。
小走りでぴょんぴょん
腰に篭をしばり
竹のザルを抱え
目指す瀬に向かう
不思議とコケるひとはいない。
竹のザルを左手に
聞き手で岩から海苔をむしる
そいつをためる
ザルいっぱいになったら
海水を絞り
腰の篭に入れる
息が白い
潮が引いているとはいえ
時よりざぶーんと波が来る
そいつを避けながら
軍手の指先は冷たい。
おしゃべりながら
手だけはシャカシャカ動かし約2時間
篭いっぱいに摘んだ。
岩海苔は黒光りしてる
それぞれ自慢しながら
家に向かう。
一度真水で洗い
海苔が岩に張り付く根っこの破片
虫や小さい貝などを取り除き
竹で編んだ簀に均一に干す
この作業がまた大変。
一日干してその後は舟小屋で乾かす
ひかり輝く艶を発する
約80センチ角の板海苔に仕上がる。
こいつを新聞紙で包み
炭のコタツの木枠に広げ
布団をかけて完全に乾かす
これでやっと完成。
たたんだ海苔をはさみで切る
七輪の炭火で炙って食べる
真っ赤な炭に直接充てると焦げる
遠火で静かに裏表を炙る
黒光りの海苔が
ほんのり緑色になる
そいつを手もみして
ぱらぱら白いご飯にかけ
醤油をたらーり
海苔の香りと旨みが
口いっぱいに広がる
新海苔のいい香りだー。
もう一品旨い食べ方がある。
真水で洗い根っこの小さな石着きを
丁寧に取り除くそして水気をきる。
雪平鍋に相川醤油(甘口のタイプ)
お酒
砂糖を加えて煮立て
その中に海苔を入れる
蓄えた旨み水がとけだし
磯の香りが立つ。
そしてこれは我が家の自慢
岩海苔の味噌漬け
これが絶品である
新しい味噌では旨くない
2年か3年寝かせた味噌
発酵が進み汁が溜まる
そんな味噌がいい
だから今はもうあの独特な
風味を味わうことはないであろう。
小石や岩の破片をとり
たっぷりの岩海苔を
袋縫いした布に入れ
汁のたまった味噌どこに置き
その上から味噌をのせて置く
一日ほどで仕上がるが
あれだけたくさん入れて
海苔の量は三分の一になる
ねっとりとした海苔
こいつを包丁で刻む
ほっかほっかのご飯に
ちょんとのっける
旨煮も焼きのりも確かに絶品
しかしこの岩海苔の味噌漬け
こいつは別格である。
海の恵み
土の恵み
発酵の恵み
今風に表現すれば
三つの恵みのマリアージュ!
トレボン
ボーノボーノ
エクセレント
ムッサンコウメー
※めちゃくちゃうまいの佐渡弁