小山市高椅にある、高椅神社の参道入口交差点に設置されたこの物体、おそらく、コケシではなかろうか。交通安全を願って置かれたものなのだろう。よくよく観察すると、2本のプロパンガスボンベで構成されているように見える。一体なぜガスボンベなのであろうか。
式内高椅神社の主祭神は磐鹿六鴈命。『日本書紀』「景行天皇五十三年十月」の記事に、こうある。
《冬十月(かむなづき)に、上総国(かみつふさのくに)に至りて、海路(うみつぢ)より淡水門(あはのみなと)を渡りたまふ。是の時に、覚賀鳥(かくかのとり)の声聞ゆ。其の鳥の形を見(みそなは)さむと欲(おもほ)して、尋(たづ)ねて海の中に出でます。仍りて白蛤(うむき)を得たまふ。是(ここ)に、膳臣(かしはでのおみ)の遠祖(とほつおや)、名は磐鹿六鴈(いはかむつかり)、蒲を以て手繦(たすき)にして、白蛤を膾(なます)に為(つく)りて進(たてまつ)る。故(かれ)、六鴈臣の功(いさみ)を美(ほ)めて、膳大伴部(かしはでのおほともべ)を賜ふ。》
理解に苦しむところもあるかとは思うが、詳細に説明しても、やはり、結果は同じなので、詳細は省略する。要するに、磐鹿六鴈は景行天皇にハマグリを膾にして献上し、その功により、膳大伴部を賜ったということで、膳(かしはで)とは、古代、カシワの葉で食器を造ったことから、大和朝廷で、天皇の食事を用意する職務を世襲した品部、膳夫、と『広辞苑』にはある。
神社境内には、社団法人日本調理師連合会から奉納された「料理の祖神」の旗がなびいている。
調理に火は不可欠である。そこでプロパンガスボンベ仕立てのコケシとなったものであろうか。