友人生野和人主宰。アシカビ『どどくまさとら』@大山サブテレニアン
脚本・演出・照明・音響・美術・制作・出演をこなすまごうことなき一人舞台。受付に奴が座っててびっくりしてしまった。いや、当然ちゃ当然なんだが^^;
生野大先生のノーリミットステージ。やりたい事をやりたいようにやって、しかもちゃんと見せきってしまう能力には驚嘆を禁じ得ない。
アングラの形態でありながら、それが尖鋭化されるとストレートプレイのような見易さと、上質な落語のようなカタルシスが得られるというのにも驚いた。
こちらも舞台を控え稽古している身だから、あんなん見せられてしまうと居住まいをただしてしまうね^^;
ミニマルだけに既に公演は終了しています。お疲れ様でした♪
【おまけ】
『古い寺院の跡。元は立派だったろう御堂や塔は、今は見る影もなく見事に朽ち傾いでいる。女は門も道もない山中の廃寺を散策する事に幾らか躊躇ったが、腰辺りまで繁る藪を掻き分け、在るか無いかの道を揚々と進む男に逆らえず、下ろし立ての靴に跳ねる泥を諦めた。本堂の裏、庫裏へと続く渡り廊下に沿い、女は数歩先の男の広い背中を見ている。男が幾分硬く緊張した声で女を呼ぶ。女の胸に秘めたある種の期待は、振り返った男のいやに青く歪んだ面相に掻き消された。女が男の面相の意味を読めぬまま一歩後退ると、男はやけに甲高い怪鳥の様な発声で後ろ手に隠した右手を高々と掲げ飛び上がる。その様はいつか観た……。何と言った?あれは。男が自慢気に女に言った。確か。ザオウゴンゲン。そう言った。青く恐ろしい面相の、まるで踊る様に片足を持ち上げ、振り上げた右手に……。男は言った。蔵王権現の振り上げた右手には……。男は……。右手には……。男の……。右手には……。いつから持っていたのか?古びた……。鉢を男は真っ直ぐ女の……。三鈷杵さ。サンコショ?ああ、金剛杵の一種。杵の先が三ツ又の鈷になってる。あれは三鈷杵さ。女は解らず曖昧に笑った。想い出。幸せな、男との想い出。つぅと頬が濡れる。女の額から滲む血液と……泪。ぐらり、女が傾く。頭が弧を描く。女が消える。どしんと小さく鳴り、男が女の消えた辺りに寄る。井戸。暗い暗い枯れ井戸。男は手に握る割れた鉢を、その井戸の中に放った……。』
“どどくまさとら”とは仮タイトル。これが正式だそうです。
興味湧くでしょ?