宴友企画共演者滝川華子参加。ラビット番長『ラビット番長ノワール短篇集』@池袋シアターグリーンBoxinBoxTHEATER
一時間程度の作品三本を用意し、ひとコマにつき二本掛ける、という企画。私が拝見したのは『夜明けの歌』『パンジーな乙女達』
こちらの団体と云えば、デイサービスを舞台としたハートウォーミングかつ問題提起作品が評判で、毒蝮三太夫師匠か中尾ミエさんが絡もうもんなら一生このジャンルだけで食っていけるのではないか、という『良い話』がひとつ売り物の団体。
しかし私が最初に観たのは北海道の開拓民を襲った巨大ヒグマと、ヒグマに復讐を誓った生き残りのお話。血糊とギミックをふんだんに使った直接的なエグい表現と、ゴシックホラーもかくやと云うほどのオチがつく作品から入ったので、今回標榜してアンケートでお伺いを立てている“黒ラビット”については抵抗ひとつもありません。むしろこっちは期待度高かったので、もっとエグくても、と思うほどでしたが、まあ企画とヴォリューム考えるとこんなもんかなぁ。
『パンジーな乙女達』はまとまりも良く、演者の頑張りもあって素直に入り込める良い作品でした。
そんな中はなちゃんはやはり見事。居姿一発であの説得力は何なんだろう?感心してしまう。本人は「年齢や席次相応の役が来ない」と嘆いていますが^^;
残念ながら29日千秋楽、三本立てだったそうですよ♪と〆てあげれば良いのでしょうが……
(注:以降、耳の痛い事を書きます)
(注:やはりツッコまずにはいられませんのでね)
2015年の公演(が初演かどうかは知らないけど)を観ている、というのをさっ引いても『夜明けの歌』の出来は悪かった。往時もあまり良い感想は持たなかったのだが、今回は素人臭い俳優陣と雑な仕事もあいまって、シーンによっては残念さが溢れてむせかえるような状態。
あの手の話でキャスト全員が白シャツ黒パンツで揃えてる理由を考えれば(透けるのは物理的に仕方ないとして)透けて見えてしまうアンダーウェアにまで違いがあっちゃいけない、なんてのは常識以前の事。色違いのTシャツや派手なカットのキャミソールがごさごさ出て来た段階で、この芝居には乗れないわね。
人材が足りなかったり、主宰作家演出家に力量が足りてなかったり、単純に集客量を増やすためだけにダブルキャストを含む複数作品同時上演はやるべきではないというのが私の持論。カラー違いという言い訳では言い逃れ出来ない『クオリティの差』が往々にして生じるし、演出家の仕事は偏りがちになるし、結果出来の悪い方に当たった観客には気の毒でならないからだ。
単純に考えれば稽古量は通常の1/3。すべて過去に上演経験のあるレパートリーとのことからある程度目算を立てて臨んでいたであろうけど、同じ俳優陣で再演したとしても解釈変わって稽古時間食うんだから、違う俳優陣で製作しようもんなら稽古量はいくらあっても足りないだろう。
そうなると演出家のやることは手薄と判断したところを埋めることに追われるから、出来上がりにバラつきが出たり、違う部分が手薄なまま本番迎えたりするのは容易に想像がつく。今回のケースで“邪推”をするなら、かなり手練れであろう『夜明けの歌』の年長者チームに芝居下手な若手ごと丸投げしちゃって、演出家はほかのもっと大変なところに掛かり切りになっていた……なんてのはどうだろう。
調べてみればこちらさんは、同じレパートリーを何度も何度も掛けてクオリティを上げていく団体さんと見ました。それはそれで素敵な姿勢と思うけど、結果出来の悪い作品につき合わされた人間はたまったもんじゃない。
せめて残りのもう一作品が、並み以上に出来の良い作品であることを祈って止みません。