職員室のあかり | ジャスミンライス流星群

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タイガーシノハラ オフィシャルブログ


 近所の中学校の体育館を借りて、一週間に一度バスケをしてる。もう十年以上がたつ。
 今夜もバスケで中学校へ行ったんだけど、中間テスト期間だというので遅くに職員室のあかりがついてた。

 ミニバスチームの監督もしたことがあって、小学校の体育館にもしょっちゅう出入りしてた。娘がいま五年生なので、授業参観日はかならず学校に行くようにしている。

 学校は特別な場所だ。
 廊下を歩くと現実じゃないみたいに思える。
 大人になるとなんど行ってもぜんぜん慣れない。
 おれなんかが本当は行っちゃいけない場所のような気がする。
 理由はわかんないけど。

 話は変わるんだけど、同窓会って楽しいよね。
 なんて言えるようになったのはつい最近のことだ。
 中学とか高校のころってあまりにも神経が細すぎて疲れた。
 大人になるにつれて試行錯誤しながら自分が楽になる方法を覚えた。
 もっとだいじなことは、自分にとって好きなことか好きじゃないことかをはっきり選べるようになった。
 そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれないけどそんなことないだろ。
 もしこれが好きだと言ったら、ひとにどう思われるかなとか考えたこと誰でも一度はあるだろ。
 今は自由にアンテナを張れるようになったので生きてるのが気持ちいいよ。
 そんなふうに思うようになって、子どものころ一緒にいたやつらも自由な姿になってるだろうなあと思った。
 それでこないだ帰省したとき中学の同窓会に行ったんだけどやっぱ楽しいよね。
 正直言って何話したかよく覚えてないんだけどね。
 酔っ払ってるからね。
 おれはすぐに忘れちゃうんだよ。
 でも楽しかったってのは覚えてるからそれでいいんじゃないかな。

 おれはどういうわけか学校ってのが苦手でね。
 それでも中学まではしっかり授業とか出てたんだよ。
 授業が苦痛でね。教師が喋るのを聞いてるのがだめなんだ。
 部活とかもだめでね。たぶん協調性とか皆無でね。
 放課後になるとすぐ帰っちゃったよ。
 帰っても別にやることもなくて、駅ビルとかで時間つぶしてね。
 また学校に戻って、部活が終わったやつらとおでん屋に行ったりしてさ。
 ひとの話を聞くのが苦手ってわけじゃないんだよ。
 おでん屋ではたぶん、毎日おれは聞き役だったはずだ。
 みんな楽しそうだったから。
 ほんとうは協調性が欲しいと思ってたのかもしれない。

 でもやっぱりあんまり昔のことは覚えてないな。
 同窓会っていうのはたぶん、おれの話を誰かがちょっとでもしてくれたら、昔のおれがどんなやつかわかるんじゃないかっていうのを期待してたのかもしれない。
 それで誰かがなんか話をしてくれたかもしれないけど忘れちゃった。
 せっかくそれのために行ったのにな。
 しょうがないよな。まったく。
 でもまあそれでもいいよ。

 高校の同窓会は卒業してから二三年くらいでやったかなあ。
 そんな早いときだから、あんまりみんな変わってないしね。
 おもしろいってこともなかったよ。
 クラスメイトだった女の子はちょっと色気が出ててよかったけどね。
 そのくらいだよ。
 でもおれは高校のときはあんまり授業とか出なかったからな。
 学校の風景とかたいして覚えてないんだ。
 体育の授業はしっかり出たよ。おれは三年間、体育委員だったから。運動会とかみんなをよくまとめたよ。たぶん。
 英語も出たかな。成績もよかったし。あんましおれの日本語はみんなに通じなかったから。英語くらいはちゃんとやろうかとか思ったんだよ。
 朝、出席とったあとはてきとうにやってた。
 喫茶店行って問題集やったり。昼からボクシングジムの練習行ったり。停学になった友だちの家にバイク乗りに行ったり。
 よその学校に好きな女の子もいたからどうにか会いにいかなくちゃならないし。
 今思えばかなり忙しかった。
 こないだゴールデンウィークに帰省したとき、おれの行ってた高校の校舎は潰されていた。いろいろな都合で町が変わるんだってさ。
 ふうんと思ったよ。おれはもう住んでない町だからね。
 思い出の場所なんかどうだっていいぜ。
 時間は進んでいくんだ。
 そこにいるひとがよかったらそれが一番いいよ。

 こうして思い返してみると、中学と高校のおれはずいぶんちがう気がする。
 どっちのこともあんまりよく覚えてないけど。
 記憶の断片をつごうよく美化することはできる。
 誰でも同じだろ。
 自分にもちょっとは素晴らしいできごとがあったと思い込まなきゃこのさき生きられない。
 作り話を自慢話に変えて説教してみたりするんだ。
 おれが楽になる方法を覚えたっていうのはそういうことかもしれない。
 大人はずるい、とか言うなよ。
 おれたちも必死なのさ。

 話は変わるけど、バスケは楽しいよ。
 こうこうと白熱灯が並ぶ職員室では、おれがかつて苦手だった教師らが働いてる。
 答案の向こう側に生徒の未来を占ってむずかしい顔をしてるのだろう。
 おれたちがおでん屋で部活や音楽や好きな女子の話をしてるときに、職員室にはあんな遅くまであかりがついていたのかなあ。

 おれにとってだいじなことはおれのことはぜんぶ自分で決めたいっていうことだった。
 でもなんか違った。
 なんでだろうな。