ランドセルにぶらさがってた飛行機のキーホルダー。
名古屋に遊びに行ったとき、空港へ連れていってもらっておじいちゃんが買ってくれた。
飛行機は大きかったし空を飛ぶのを見てすごいと思ったけどそんなに心は震えなかった。
小学生だったおれはあまり興味があることを探せなかった。
いろんなことがあたりまえにあったからどうってことなかった。
でも不思議なんだけど今はいろんなことが不思議だよ。
地球が終わりそうだということを誰かが言い出すとそいつの話をもっと聞きたくなるんだ。
犬の種類って不思議だろ。土佐犬とチワワが同じ犬だなんて。
君はゆうべとろんとした目でおれを見つめたのに今日はあいつとずっとしゃべってる。肩を寄せて一時間もしゃべり続けてる。おれを横目で見ることもないし。
そんなふうにして交差点に立ってた。
歩行者信号を見つめてる。
おれの隣りのビジネスマンもおれと同じように信号を見てた。
おれは彼の立ち方に似ないようにすこし姿勢を崩した。
ジーンズのポケットに手を入れた。窮屈な指先。
車はゆっくりと通り過ぎる。
誰かの携帯電話のベルが鳴った。
おれの着信の音に似てるけど少しちがう。
ベルはいつまでも鳴ってる。
おれにはこんなに聞こえるのに。
風がときどきやさしく吹いた。
うっすらと桜が咲いている道。
水辺の桜は遅いんだと誰かが教えてくれた。
誰だったかは忘れた。
信号はとっくに変わっていた。
おれが歩き出したのは最後だった。
何となく口笛を吹いたけどうまく鳴らなかった。
ふと空を見ると黒い影がまっすぐ向かってきた。
大きな飛行機だなあ。
大西洋のカジキマグロを想像した。
飛行機のおなかってもろそうだと思った。
動物みたいに内臓がたくさんつまってるように見える。
おまえにとって恥ずかしいものを見ているようだけどうしろめたさはない。
本当に理解し合うって難しいことなんだぜ。
おれは彼女をいつまでも見上げていた。
春の空はいろんなものが落ちてきそうな感じがするよ。
君がおなかを開いてみせて。
素敵な宝物。
パイロットって上から地面を見るのかな。
おれはおまえをいつまでも見上げてるよ。
恥ずかしがるなよ。
おまえのおなかをおれに見せな。
さすってやるから。
