ふざけているうちに連絡がつかなくなった。
手遅れだと思ったら夜眠れなくなった。
おれはもう大人だったけどすごくもろかった。
電話もしなかった。
ただ終わってしまったことを感じた。
春になったばかりだったけど地面ばかり見て生きることになった。
それからは、仕事が休みの日は電車に乗った。
隣駅まで130円の切符を買ってどこまでも行って、電車に乗るのにあきたら帰ってきた。
小説を持ってそれを読んでいるうちに県境を越えてしまってもうやけくそでどこまでも行った。
郊外の電車はがらがらで、乗客がおれひとりということもあった。
ひとり取り残された様子が今の気持ちにしっくりきて快感だった。
電車の振動は女の子の悪意みたいだと思った。
そういうのに気づいてるのに乗ってやらないおれはつまらない人間だと思った。
女の子はおれが傷ついたのを見てやっと納得するのだろう。
それなのにおれはこうしてたったひとりの車両で窓の風景を眺めてる。
目には見えないけど新しい粒が飛び交っているのがわかる。
黄緑色の風景がふくらんで頬を伝った。
ガラスの外は世界が動いているけど、今そこへ参加する気には到底なれない。
やさしい君を思ったままさようならを決めなくちゃ。
窓の景色はいつまでもぼやけている。
季節の変わり目はすべてが少しずつ狂っている。
どうかしてたんだ。ぼくも。君も。
寝ているうちに聞いたこともない駅に着いた。
なんとなく駅に降りた。
ホームでおまえに似た少女が立ってればいいのに。
ぼくらはまた出会うんだ。
午前九時から午後三時半まで。
どこまででも行って帰ってくる。
意地になってそれを繰り返した。
130円と缶コーヒーとつまらない本。
汚れたページをめくる指はおまえの肌を刺激した指とおなじ。
いつかまた会うことだってあるよ。
線路はつながっているんだってさ。
ありきたりな理屈がおれをいらつかせる。
おまえなんか嫌いだ。
大嫌いだ。
ばいばい。
