家族一人ひとりの曲を作って残したいというのが僕のライフワークです。いままで3年かかって5曲、あと7曲。でもまだ家族は増えるかもしれないから(笑)、全部揃うのはいつになるか、楽しみでもあります。
処女作は弟の曲
最初の曲は若くして交通事故で亡くなった弟の曲でした。タイに来る前、渋谷の音楽学校に通っていた時に受けていたオーケストレーションの授業で初めてオリジナル曲を管弦楽編成で作曲し、アニメーションも加えてできたのがこちらの作品です。素人作品もいいところですが、もし良ろしければ聴いてみてください。
この曲にはちょっと長いエピソードがありまして、20年ほど遡ります。弟が交通事故で36歳で天国に行ったのが2003年、僕が香港にいた時でした。知らせを受けて急遽夜行便で帰国。実家にはすでに冷たくなった弟の傍らで涙する両親の姿がありました。
それから3年程たったある日、実家に帰省していた僕はふと弟の曲を作ろうと思い立ち、ピアノの前に座りました。五線譜がなかったので方眼紙に五線を引いて書き始めたんです。ピアノを弾きながら音符にしていくんですが、2時間くらい書き続けたでしょうか、用意した五線の小節数ぴったりに修正もほぼ必要ない状態で譜面ができた時はとても不思議な感じがしました。どうにも寒くてお風呂につかっても震えていたのを鮮明に覚えています。
その頃はまだ楽譜ソフトというようなものはなくて手書きでした。その数年後、楽譜作成ソフトが出始めて、cakewalkと言う名前だったか、それを使って当時自分の周りにあった楽器(ピアノ、ギター、サックス、フルート)に編曲しようとしていた形跡があります。当時は大した音源もなく再生もできませんでした。
時は経ち、時代も変わり
そして4半世紀が経ち、音楽学校で作曲のお題をもらった時、真っ先に思い浮かんだのがこの弟の曲でした。いまならFINALEで楽譜を作ってcubaseにデータを送ってオーケストラで鳴らすこともできます。気がつけばそんな時代になってたんですね。
弟とは4歳違いですが、僕よりも先に結婚して子供も3人、両親にとっても初孫でした。とても優しく親のこともよく面倒を見てくれていました。僕は海外にいることが多かったのでとても助かりました。
料理人をしていてその仕事帰りのバイクで右折してくる車を避けられず、ほぼ即死だったそうです。事故現場には何度も足を運びました。弟の足跡を辿って職場にも行き仕事仲間にも話を聞いて、弟の生き様を少しは知ることができました。それから何十年も経ちますが、いまも命日にはお墓参りしてくれるお友達もいらっしゃいます。
ストーリーを考える
この曲のモチーフは弟がくれたものです。とても優しい繊細なメロディです。当初、そのメロディと以前やりかけた編曲をベースにしながらオーケストレーションをしていきました。綺麗な曲にはなったのですが、そのままではまるで歌もののような曲になってしまい、弟の曲という感じがしませんでした。奥さんに聞いてもらったら、ストーリーがないからじゃないかと言われ、なるほどと思ってこの曲はどういう場面、どんな気持ちを表現しようとしてるのかを考えました。そしてできたのがこんな詩です。
鐘の音が聞こえる
静けさ 安らぎ
あかりが広がっていく
楽しそうな音楽が聞こえてくる
ここはどこだろう
知らないところだけれど あたたかさに包まれる
さあ歩き出そう。あそこに向かって上っていく
~~~~~~~~~~
少し前 悲しいことがあった
僕は重い体を動かすことができなかった
バイクに乗って事故にあってしまったんだ
お母さんや家族が悲しんでいる
泣き声も聞こえる
でも もうあの世界には戻れない
僕はあそこから皆を見守ることにするよ
だからそんなに悲しまないで
~~~~~~~~~~
さあ あそこに向かって進んでいこう
回りに小動物が跳ね 昆虫たちが舞っている
きれいなお花畑の中に階段は続く
雲を抜けて どんどん明るくなってくる
もうそこは近い
彩り豊かな高い空
足取りが軽やかになってきた
体が軽い。とても気持ちが良い。
ほがらか
ついにそこに到着
~~~~~~~~~~
そして おだやかな眠りにつく
曲のタイトルは「天国への旅立ち His departure」としました。当初「天国への階段」としたんですが、どうも昔のヒット曲をイメージする人がいるようなので邦題だけ変更しました。