3302. 3割引きの恋は、アールグレイの香りの中に (25)
「あら、あなたもう起きたの? 昨日も遅かったんだからゆっくり寝てればよかったのに」
「ああ、でも午後は三郷で試合だから 今から起きておかないと身体が動かないからな。優子と洋平はもう出かけたのか?」
「洋平は7時半に学校に、優子は今出たばかりよ。二人とも今日試合だから。」
「試合?」
「そう洋平は、仮入部中の野球の試合で10時から。優子は、ラクロスの試合で慶陽高校と交流試合。慶陽高校でやるんですって」
「へ~、んじゃ2人とも同じところで試合か」
「そう。多分、一緒に帰ってくると思うんだけど。メールくれることになってるから。帰りはたぶん16時過ぎくらいだから、ショートケーキつくっとかないといけないの」
「ショートケーキ?」
「俺のぶんは?」
「あるわよ、あなたの好きなケーキだもの」
「んじゃ、(試合が終わったら)すぐ帰ってくるよ」
「了解。帰る時にメールちょうだいね」
「わかった。取り合えず紅茶淹れてくれる?」
と言っている足元で小柴犬の為五郎が甘えてくる、誰がこの家で一番偉いかがわかっているのだ
1番父親 家族の大黒柱
2番母親 ご飯を作ってくれる人
3番優子姉ちゃん 散歩に連れて行ってくれる人
そして俺 頭をなでるだけの人
という順位を為五郎はつけているに違いない
父親の名は石橋博康、母親は真由美
子どもの俺から見ても仲のいい夫婦
俺の理想とする夫婦像だ
いつも、休みの日は二人で出かけていく
いわゆるデートだ
優子姉ちゃんと俺が部活でいないときは
必ずと言っていいほど、二人で出かけていく
先週は、二人で父の母校、明治大学ラグビー部の対抗戦を観に秩父宮ラグビー場に行った、その帰りに表参道を散歩して、ブルガリのビル地下にあるデザートショップでパンケーキを食べてきている
先々週は、亀有のアリオで映画「トップガン」を観に行って
帰りにアリオの中にある「LLビーン」で買い物をして
甘いものが好きな父親はアリオで映画を観たあと
必ずと言っていいほど
31でアイスクリームを食べるのが楽しみらしい
しかし、何が一番楽しみかというと、母親が作ったデザートが何よりも大好物とか
ショートケーキも優子姉ちゃんと俺のためではなくお父さんのためだということを
お姉ちゃんから聞かされたときはショックだった
それだけお母さんはお父さんを愛しているということだなと
改めて認識した
今日は、ラグビーの試合にいくけれども
終われば、まっすぐ帰ってくる父親
仕事が終わっても、どこにもよらずに帰ってくる
お酒を飲まないから、誰からも誘われない
たまに誘われても、1次会で帰ってくる
おふくろと結婚する3年前に2トントラックにはねられて以来
お酒を受け付けない身体になったらしい
跳ねられたあと、午後に包帯だらけで出勤したとか
その1か月後の1994年の3月にニュージーランド遠征に行ったとか
どんなん身体しとんじゃ
to be Continued
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