Kさんの願い ~Pieces L'Arc~en~Ciel~ | LYRICSの生みだした文化の極みだよ

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1.02

 

5月7日(火)

 

連休明けで出勤し仕事の準備をしていたとき、上司が現れてこう言いました

 

『Kさんが亡くなったらしいぞ!』

 

『?』(何言ってんの、この人?)

 

Kさんは僕の会社の元上司であり、定年後は嘱託社員として重要書類の作成を行ったり庶務をこなしてくれている人物

 

僕が若い頃からとても可愛がってくれた人物です

 

そんなKさんも5月20日に退職が決定し、4月からは有休消化でたまに顔を出す程度でした

 

『本当だって!昨日、突然だったらしい!』

 

『嘘だろ。。。一体どうして。。。』

 

 

 

入社当初、僕はKさんがあまり好きではありませんでした

 

関係が変わったのは、Kさんが僕をスキー旅行に誘ってくれてから

 

当時Kさんは友人達とマイクロバスを借りてスキー旅行に出かけるのが毎年の恒例行事でした

 

独り者で暇を持て余していたからか運転手の確保か、誘いを受けた僕も同行することにしました

 

昼はスノボーを楽しみ、夜はみんなで酒を飲む

 

最後の年はろくに滑らずKさんと昼間っからビールばかり呑む始末

 

各ファミリーの子供達の成長と共にこのツアーはなくなりましたが、これをきっかけにKさんと随分仲良くなりました

 

Kさんに異変が起きたのは8年前

 

喉頭癌を発症し声帯を切除する事態になりました

 

命は取り留め無事復帰したものの、一線からは身を引かざるを得ませんでした

 

そして主に事務面で会社を支えてくれていましたが、こんなやりとりもありました

 

 

これは一昨年の黒瀬キャンプ場からのラインです

 

今年の四月、この仕事を僕達に託してKさんは退職を決断したのです

 


 

 5月8日(水)


斎場で久々にKさんの子供達と対面しました

 

息子さんは警察官、娘さんは結婚されて、ともに娘さんがいました

 

斎場には小さな孫のほっぺにキスをしているKさんの写真が飾られていました

 

Kさんの遺影は、ゴールデンウィーク前にKさんが僕に見せた笑顔と全く同じ笑顔でした

 

 

 

泣かないで 

    泣かないで  

大切な瞳よ

 

 

悲しさにつまずいても 

真実を見ていてね 

そのままの あなたでいて 

 

大好きなその笑顔 

曇らせてごめんね

祈っても

時の流れ早すぎて 

遠くまで流されたから 

戻れなくて

 

 

 

あなたのすぐそばに 

また新しい花が生まれて 

木もれ日の中で

鮮やかに揺れてる 

いつまでも見守って

あげたいけど 

もう大丈夫 

優しいその手を 

待ってる人がいるから 

顔を上げて

 

 

 

あぁ 私のかけらよ 

力強くはばたいてゆけ 

振り返らないで 

広い海を越えて 

たくさんの光が 

いつの日にもありますように 

あなたがいるから 

この命は永遠に続いてゆく

 

あぁ 

両手にあふれそうな想い出たち 

枯れないように 

ゆっくり明日を訪ねてゆくから 

私のかけらよ 

力強くはばたいてゆけ 

振り返らないで 

広い海を越えて

 

 

Kさんは自分の死に気付かずにまだ眠り続けているのかもしれない

 

でもその眠りの中で子供や孫達のことを夢に見続けているはず

 

夕方4時過ぎ

 

海岸を散歩していたら細かい雨が降ってきました

 

雨予報は出ていなかったはずなのに

 

多分、今はKさんが白い灰になってしまった頃だろう

 

小さくなってしまったその身体で、いまでも自分のかけら達を夢に見ているのだろう

 

そう思いたくて雨の中を歩いていました