では、白色テロを舞台として、もう一度歌詞を見てみましょう。
ちなみに、ここからはすべて自分なりの分析なので、著者やバンドの立場ではありませんよ。
下晡 一个人踮厝內 ē-poo, tsi̍t ê lâng tiàm tshù-lāi
午後 一人で家にいる
西北雨 沃澹窗外的衫 sai-pak-hōo, ak-tâm thang-guā ê sann
干している洗濯物は 夕立で濡れた
外口的人 猶未轉來 guā-kháu ê lâng iah-buē tńg--lâi
出かけたあの人 まだ帰ってこない
戇戇咧等 戇戇攑一支雨傘 gōng-gōng--leh tán, gōng-gōng gia̍h tsi̍t ki hōo-suànn
ぼうっとして待ち続け ぼうっとして傘をさし
イラストのこの凛としたお母さんは一人ぽっちに、
窓から外の雨と洗濯物をぼうっと見つめていました。
洗濯物は濡れたのに、気にしないのは大事な息子を待っていますから。
彼女は行方不明の息子を待って、待って、傘をさして雨の中に待ち続けています。
為你 幾若擺睏袂去 uī lí, kuí-nā pái khùn bē khì
君のために 何週間も寝られず
全世界 揣袂著你的形影 tsuân-sè-kài, tshuē bē tio̍h lí ê hîng-iánn
どこへ行っても 君を見つからない
凡勢 會當共你放捒 huān-sè, ē-tàng kā lí pàng-sak
いっそ 君を諦めれば
氣身惱命 我哪會攏無要無緊 khì-sin-lóo-miā, guá ná-ē lóng bô-iàu-bô-kín
あっ!もう!なんで私はこんなにのんびりにいられるの?
お母さんは何週間も眠れないのは、息子が消えてから何週間も経ったからですね。
この期間、いろいろなところへ行って探してたのに、息子を見つかりません。
もう疲れました。
もうこれ以上手がかりがありません。
またまた、他の家族を世話しないと、またまた日常を経営しないと、いっそ、諦めよう?
「あっ!もう!」諦めようとする自分はバカ!バカ!バカ!
息子を諦めませんよ。
踮遮規暝 看電火閃爍 tiàm tsia kui-mê, khuànn tiān-hué siám-sih
一晩中ここにいて 電灯の点滅を見て
我踮遮等待 拍無去的人 guá tiàm tsia tán-thāi, phah-bô--khì ê lâng
ここに待ち続けて 消えた人を
聽厝內的聲 聲聲佇咧吼 thiann tshù-lāi ê siann, siann-siann tī-leh háu
家の声を聞いて 泣き声だらけ
我踅來踅去 思念火燒房間 guá se̍h-lâi-se̍h-khì, su-liām hué sio pâng-king
家で歩き回り 会いたい思いが火になってこの部屋を呑んだ
諦めなくても、どこへ行けばいいでしょう?
お母さんは一晩中電灯の点滅を見ながら悩んでいます。
誰も話さない家では、泣き声しかありませんね。
ほかの家族も悲しいですよね。
お母さんは息子に会いたくて、焦って家に歩き回り、その気持ちは火のように強く、家を呑んでしまうように激しくなりました。
袂開的花 無欲轉來的人 buē khui ê hue, bô beh tńg--lâi ê lâng
咲かない花 帰らない人
美麗的你啊 想著你彼當時 攑懸你的旗仔
bí-lē ê lí--ah, siūnn tio̍h lí hit-tong-sî, gia̍h kuân lí ê kî-á
きれいな君よ 君が旗を高く掲げる姿を思い出した
路邊的話 滿街路雨紛飛 lōo-pinn ê uē, muá ke-lōo hōo hun-hui
町の噂は 雨のように散らし
時代的變卦 孤單的我一个人 問天也毋捌
sî-tāi ê piàn-kuà, koo-tuann ê guá tsi̍t ê lâng, mn̄g thinn iā m̄-bat
時代の変わり 孤独な私は一人ぽっちで 神様を聞くのもできない
手內啥物攏無 只賰我欲予你的愛 tshiú lāi siánn-mih lóng bô, tsí tshun guá beh hōo lí ê ài
手のひらに何もない 君への愛しか残らない
有血有肉的人 煞下落不明 ū hueh ū bah ê lâng, suah hē-lo̍h-put-bîng
血も肉もある生きてる人間 なんで消えるの?
お母さんは息子の姿を思い出しました。
息子が旗を高く掲げる姿でした。
お母さんはきっと息子が頑張っていたことを知っていますよね。
本当に手がかりがありませんか?
違いますよ。
町はどこでもひそひそと息子のことを話しています。
賢くて勉強も上手な息子はいい職業をもって、いい将来があるはずなのに、
政権が変わると行方不明の人になった時代の流れは、お母さんにとって難しすぎます。
神様に聞きたくても、どう聞けばいいかわかりません。
お母さんはもうすべてを失いました。
他の家族は?逃げましたか?同じく行方不明になりましたか?
一人ぽっちになったお母さんは、息子を救うために、財産を使い切りましたよね?
もう何も持っていないお母さんは、息子への愛情しか残りません。
お母さんはわかりませんね。
笑ったり喋ったり生き生きと生きてた息子は行方不明になったのは理不尽すぎますからね。
共你的 記持啊 囥佇我的心內 kā lí ê kì-tî--ah, khǹg tī guá ê sim-lāi
君についての思い出を 心の底に隠して
騎你的 白馬啊 行你欲行的路 khiâ lí ê pe̍h-bé--ah, kiânn lí beh kiânn ê lōo
君は君の白い馬を乗って 自分の道を歩いてよ
風吹來 花落塗 點一欉香祈求 hong tshue lâi, hue lo̍h-thôo, tiám tsi̍t tsâng hiunn kî-kiû
風が吹いてきて 花を散らし 線香を燃やして祈り
南無觀世音菩薩 lâm-bû-kuan-sè-im-phôo-sat
南無観音菩薩よ
息子のことはタブーになりました。
息子との思い出は心の底に隠すしかありません。
これ以上語ると、お母さんも他の家族も危ないですから、我慢するしかありません。
お母さんは心の中に息子に「自分の理想を叶えてね。応援するよ。」と言いました。
お母さんは線香を燃やして観音様に祈りたいけど、
ずっと我慢してた感情は爆発してしまいました。
息子に行方不明させたあるものへの怒りを潜んでいる声で、観音様を叫びました。
若準講你 算著這齣悲劇 nā-tsún kóng lí, sǹg tio̍h tsit tshut pi-kio̍k
もしこの悲劇を 予測できたなら
你敢會看顧 紲落來伊頭前 彼逝歹行的路
lí kám ē khuànn-kòo, suà--lo̍h-lâi i thâu-tsîng, hit tsuā pháinn kiânn ê lōo
この子のこれからの険しい道を 見守ってあげるの?
夢中的我 看你沓沓仔行 bāng-tiong ê guá, khuànn lí ta̍uh-ta̍uh-á kiânn
夢の中に 君がゆっくり歩いていく姿を見て
牽你的亡魂 有一工咱做伙 轉去彼个所在
khan lí ê bông-hûn, ū tsi̍t kang lán tsò-hué, tńg-khì hit ê sóo-tsāi
あなたの魂を鎮め いつか一緒に彼岸へ行こう
「観音様よ。すべては逆らえない運命だとわかっていますが、
もしあの子の今の状況も運命だったら、
せめてあの子の苦しみを少しでも軽減してあげてくださいよ。」
お母さんは息子のいる場所を実は知っています。
息子は監獄にいます。
虐待しかない監獄にいますから、もう神様に祈るしかありません。
神様が応えてくれたかなぁ?
お母さんは息子がゆっくり歩いている姿を夢見ました。
目的地は三途の川でしょう?
息子の死を受けたお母さんは、息子の魂を家に戻れるように葬式の儀式をしました。
そして、いつか息子と一緒に彼岸へ行けるように祈ります。
我 蔫去的愛(規路攏是) guá, lian-khì ê ài(kui-lōo lóng sī)
私の枯れた愛(道に散らし)
佮你 恬去的心(你) kah lí, tiām--khì ê sim(lí)
君の 静かになっていく心と
佇這烏暗時代(佇這烏暗時代) tī tse oo-àm sî-tāi(tī tse oo-àm sî-tāi)
この暗い時代に(この暗い時代に)
是有緣無份(想欲講出) sī ū-iân bô-hūn(siūnn beh kóng-tshut)
縁があるけど份はないね(言い出したいなぁ)
この暗闇な時代には、
息子への愛情はもう動かない息子の心臓へ届けられません。
親子になれる縁を持っていますが、長く一緒にいられる「份」はありませんね。
寫袂了的批(的) siá bē liáu ê phue(ê)
書きかけたままの手紙(の)
佮講袂煞的話(奈何) kah kóng bē suah ê uē(nāi-hô)
言いかけたままの話(切ない)
(亻因) 開袂完的銃(開袂完的銃) in khui bē uân ê tshìng(khui bē uân ê tshìng)
(彼たちが)発砲し続ける銃(発砲し続ける銃)
看人去樓空(火烌猶在) khuànn lâng-khì lâu-khang(hué-hu iû-tsāi)
誰もいなくなった(灰燼がまだ残り)
お母さんはまたまた息子にたくさん話したいことがありますが、
そのすべては銃声に止められました。
銃声だけは止まりませんね。
息子だけではなく、息子の仲間たちも、この土地に暮らしてたたくさんの人達も
その銃声の中に消えていきます。
残ったのは、灰燼だけ。
雨 微微仔落 hōo, bî-bî-á lo̍h
雨は しとしと降ってきて
天 微微仔光 thinn, bî-bî-á kng
空は 薄らと光っていき
看你 微微仔笑 khuànn lí, bî-bî-á tshiò
君は 微笑んで
後世人再會 āu-sì-lâng tsài-huē
来世でまた会おう
息子が死んでから何年経ったかなぁ?
同じ雨の日だけど、薄い光が暗闇な時代にさしてきました。
息子の理想はもうすぐ叶えますか?
お母さんは息子の微笑みを見えたようで、約束しました。
「来世、また会おう。」
この歌を聞きながら歌詞を読んだら、太字のような画面が出ました。
歌詞に言ってないことまで、白色テロの状況に合わせて書いたものなので、同人みたい感じですが、少しでも台湾のその歴史を感じられますか?
次は歌詞の中に日頃でよく使っている台湾語を説明しながら、自分の考え方を語りたいです。
では、かたい内容ですが、ここまで読んでくれて、ありがとうございました