さっぱりした透が帰ってきて、『あ~、つっかれた!』と言って座った。
『も~、最近暑くなってきたから大変だよ』
『ちゃんと水分取れよ』
『取ってるよ・・・んで、何?』
『え?』
『用あったんだろ』
透のアクロアイトの瞳は、俺にまっすぐだ。
何の飾りもなく純粋な無色透明の瞳。
『うん・・・なんていうか・・・お前の道場にアイオライトの女の子がいないか?』
透はからかったりしない。でも、やっぱり気恥ずかしかった。
『アイオライト?』
『うん。お前の妹くらいの』
『ああ、菫だな。妹の友達だ』
菫・・・菫っていうんだ。
とても目立つ、巻いて広がる黒銀の髪・・・
『家知ってる?』
ちょっと勇気がいったけど聞くことができた。でも透はそれを聞いて目を見開いた。
『ちょっと待て・・・家聞いてどうすんだ・・・』
そんなに驚かれると言い辛いけど・・・
『守護してもらおうと思って』
『守護・・・』
透は繰り返して呆然としてる。そんなに驚かなくても・・・
やがてふうっと息を吐くと、鼻をかいた。
『そうか。・・・確かにそっちの方が侍女よりいいかもしれんな・・・でも確か6歳だぞ?』
『俺だって9歳だ』
『そうじゃなくて・・・』
言いたいことはわかる。竟も言ってたし・・・
『親が反対、するよな・・・』
『間違いないよ。16まで待たないといけない』
守護が決めた主には誰も異議を唱えることはできない・・・でも時期については、成人するまでは親の意見が考慮されるものだ。
『でも俺、どうしても守護が欲しい。10年、待ってもいいから・・・』
生まれてから今までよりも長い時間・・・そんな時間を想像すらできない。でも、この気持ちは、あの女の子が守護だと分かった瞬間から、俺の頭から離れない――離れないんだ。
透はちょっと切ないような瞳で俺を見た。
こいつにされるなら、同情でもいい。
『家は道場から石垣の道を通って、公園を左手にまがったところだ』
教えてくれたら、涙が出そうになった。
ほんとにいい奴なんだ、透って。
こんな男になりたかったな。
『ありがとう』