歩きながら、ここは北嶺の銀細工の店、こっちは有洲の果物を使った焼き菓子のお店よ、なんていちいち説明してたら、お父様は『菫は歩くパンフレットだな』と笑った。
『守護の記憶は特別なんだって。師匠が言ってた』
『うん。私たちはそれで知識を頂いて来たからね。そういうすごい人が自分の娘だなんて、なんだかおかしな気分だな』
『え?』
『それもこんなに可愛いお嬢さんだ。なぁ?』
お父様はそう言って私を抱き上げてほおずりした。私はすごく幸せな気分になって、ずっと笑ってた。なんにも可笑しいことがなくっても、ずっと笑ってた。
抱っこされて散歩するなんて、なんかもうずっとずっと昔の記憶。
お父様はまるで大切な宝物みたいにやわらかく私を支える。その高い目線で見ると、遠くのお店で忙しそうに働く人の姿までよく見える。
ゆっくりと歩くたびに上下に揺れる感じが、心音を聞いているようにリズムを持って私を安心させる。ふんわりぷかぷか浮いているみたい。
お父様、ほんとうにほんとうに大好き!