次の瞬間には海の中の建物にいた。
そこはギリシャ風の神殿のような白い建物で、太いエンタシスの柱が高い天井に向けてそびえている。その間の大きなガラス窓の向こうは、海中――
明るいエメラルドグリーンにきらめいて、熱帯魚が群れを成して泳いでゆく。
周りを見回すと、忙しく行きかう同じ衣装の少女や女性のほかは人もなく、正面には美しい女性が座していた。
『よくいらっしゃった。咲宮(さきみや)じゃ』
真っ白な衣装に軽く結った金色の髪をゆるやかにまとわせて、微笑む咲宮様の瞳は月長石。ゆらめく真白の光が柔らかくこちらを見ている。
『それぞれにお部屋をご用意いたしたゆえ、時間までどうぞおくつろぎくだされ』
そう言って小さな扉をそれぞれの足元に描く。私と両親、紅と緑子様、ユカリ姉さまは同じ部屋に移動した。
白の落ち着いたインテリアの向こうに、くっきりと眩しい青い空と青い海が見える。それ以外は何も見えない、美しいコントラスト。
その部屋はでも、つながってはいるが4つの区画に分かれていて、必要なら別々に休むことができるようになっている。
隅にはさっき忙しく働いていた女の子がかしこまっていて、『部屋付けの御使でございます。御用の際はなんなりと申し付け下さいませ』と言って礼をし、お茶の用意をし始めた。
お父様とお母様は中央のリビングに置かれたラブチェアのひとつに座る。
ユカリ姉さまも座って、『御使さん、お名前は?』と聞いた。童女は『鳩と申します』と答えて紅茶とお菓子を出した。
紅が、状況に飲まれている私の手を取ってぎゅっとつなぐ。
紅の顔を見ると、よそを向いていたけれど、少し気が緩む。
その手を引いて紅も席に着いたので、私も座った。