お父様はそれから、お仕事にも行かずに私のそばにいて、私の部屋で、何があったのか聞き出そうとした。
私は何も話す気になれない・・・
お母様が、何か言ってお父様を部屋から出させた。
少しだけ、張っていた気が緩むのを感じる。
『菫・・・』
お母様が私を抱き寄せる。
『あのひまわりは、彼がくれたのね・・・?』
ひまわりは花粉をたくさん机に落として、でもまだ咲いていた。
『まだどこにも咲いていないから・・・きっと、あなたの為に、不思議な力を使ったのね』
そんなこと考えもしなかったので、私はお母様の顔を見た。
『上の方のことは、私もあまりよく知らないけれど・・・即位前の宮様の御力は、そんなに強くないと聞いている。きっと、一生懸命咲かせてくれたんだよ。あなたの為に・・・』
一生懸命に・・・
そんな紅の姿を想像して、胸が苦しくなった。石のことを思いついて宝石箱を見た。
『お母様・・・これも、もらったの』
小さい小さい、美しいインペリアルトパーズ・・・!
お母様は目を見張った。
とてもとても、驚いた。
『これは・・・菫、これはね・・・』
お母様の声が震える。
『これは、彼の守り石・・・彼の、命よ・・・』
守り石――
『宮様や姫神様は、ご自分の命を石に変えることができるの。そうして色んな御役に立てるのよ・・・ああ、菫・・・!彼は本気なのね・・・!』
お母様は泣いていた。
この石がそんなに重要な意味を持つことなんて知らなかった・・・
返すと言った時のことが浮かぶ。
紅があんなに真っ暗な気持ちになったのは・・・
ただの石じゃなかったんだ・・・
それどころか、もっともっと、大切な大切な・・・あなたの命だったんだね・・・
私は立ち上がった。
目を閉じて守り石に心を傾けた。
暖かい波動を感じる・・・でも、気配はない。
自分を中心にして、波紋のように心を広げていく――紅はどこ?
やがてあの大きな日本家屋の一角に、紅の気配を見つける・・・火の消えたような紅の心・・・!
今すぐ抱きしめたい・・・!抱きしめて大丈夫と伝えたい・・・!
あなたはあなたで、女だろうが男だろうが私には関係ないのだと叫びたい!
守護の力をまともに使ったのはこれが初めてだった。
紅の気配を心でつかんだまま、私は走り出した。