次の日道場に着くと、門内に男の子の集団がいて、ざわざわしていた。
透がその集団の外側にいたので見ていたら、こちらに気づいて手を振ってくれた。
真ん中の方には紅がいて、見たこともないような素晴らしい笑顔をしていた。ふざけ合っている。
これほどの友達に囲まれていたら私なんかには気づかないね・・・と思って道場に入ろうとしたら、紅はちゃんと声を掛けてくれた。
『菫!』
満面の笑顔で言った。『またな』
和輝師範が来て、男の子集団を連れて行ったのを、うらやましいくらいの気持ちで見送った。
夕方、私は家の近くで遊園地から帰ってきた透を見た。
透は何故か目が赤かった。
『おかえり』
『ああ、菫・・・』
透は私に気がついて、鼻をこすった。
『どうだった?遊園地』
そう聞くと、思いもかけない返事がきた。
『うん・・・いいお別れ会だったよ』
お別れ・・・?
意味が全然分からなかったけれど、その言葉に私の胸の音がだんだん大きくなる・・・
『あいつ最後に、みんないいヤツだったとか言いやがって・・・カッコよすぎんだよ。泣くなよって、笑うんだぜ・・・』
その笑顔が視える。
『友達全部と別れてあんなとこ行かなきゃならないのにさ・・・真似できねえよ・・・』
辺りがさぁっと暗くなった・・・胸が空っぽになるような気がした。
『・・・紅はどこに行くの』
『えっ!』
透は私の顔を凄く驚いて見て、しばらく見て・・・口をつぐんで顔をそらした。
『ごめん忘れてくれ・・・』
そのまま行ってしまいそうだったので腕にすがってもう一度聞いた。
『待って!紅はどこに行くの?』
透は顔をそらしたまま、言った。
『華瑶苑だよ・・・』
華瑶苑?
何を言われているかまったく分からずぽかんとした。
『お前を守護にっていうのも、女の子にキスしてたのも悪気があった訳じゃなくて・・・あいつ友達全員男だろ?女の子の友達が欲しかったんだよ』
『どうして・・・』
やっぱりひとつも理解できない・・・
『華瑶苑は男子禁制だからさ――』
頭が真っ白になる・・・
『あいつは可哀想だ。何でこんな年で独りぼっちにならなきゃいけないんだ!しかもあいつは自分の事、男だとしか思えないのに!』
透はまた泣いていた。
『菫・・・あいつを嫌いにならないでくれよ。お前のこと、紅気に入ってるみたいだからさ・・・』
そしてまた鼻をこすって、背を向けた。
『俺が話したこと、誰にも内緒な!紅にも知らないふりしてくれ・・・じゃな』