フロリダ州の巨大リタイアメントコミュニティ、ヴィレッジズ(The Villages)で、
住民の庭に置かれた高さわずか12インチ(約30センチメートル)の小さな十字架を
めぐる法廷闘争が、実に5年半もの歳月を経て、終結しました。
その結末は、関係者が驚くほどの高額な和解金でした。
この小さな飾りが生み出したのは「法務費用の山」であり、和解金と費用は総額で
約25万ドル(3875万円)近くに達したのです。
始まりは「匿名」の苦情と1日25ドルの罰金
この騒動の中心にあるのは、ウェイン・アンダーソン夫妻の庭に置かれた、
目立たない白い十字架です。夫妻はこれを「宗教的な象徴」と呼ぶ一方、
コミュニティ側は「庭の装飾品(ヤードアート)」と表現していました。
2019年、匿名の苦情が寄せられたことが全ての始まりでした。
この苦情はアンダーソン夫妻の十字架を名指ししたもので、これをきっかけに
警告が発せられ、その後はなんと1日あたり25ドルの罰金が科され続けました。
この罰金が積み重なった結果、最終的に夫妻に科された累積罰金は44,000ドルに上りました。
【日本円換算】
• 累積罰金:44,000ドル (約682万円)
「選択的執行」と訴訟の泥沼化
アンダーソン夫妻の近隣を監督する地区8(Village Community Development District eight)は、
夫妻がコミュニティ基準に違反しているとして訴訟を起こしました。
夫妻は、自宅には他にも禁止されている芝生装飾品はあったものの、自分たちだけが狙われた
として、この措置を「選択的執行」であり、「常識的に考えてばかげている」と強く非難しました。
裁判所文書が何十ページにもわたる長期的な法廷闘争を経て、最終的に和解という形で幕が引かれました。
和解のコスト:25万ドル超の支払い
ヴィレッジ・コミュニティ開発区8は、この紛争の解決のために高額な支出を余儀なくされました。
和解の条件として、地区8は以下の金額を支払うことに合意しました。
結果として、地区8が支払う総額は**25万ドル近く(約3,875万円)**にもなりました。
十字架は「鉢植えに固定」で存続決定!
5年半に及ぶ闘争の末、アンダーソン夫妻はこの小さな白い十字架を庭に置き続ける
許可を得ました。ただし、和解の条件として、十字架は地面に直接立てるのではなく、
鉢植えに固定することが求められました。
夫妻は、これは自分たちの「憲法上および神から与えられた権利」だと述べ、
十字架が庭の中央、正面に展示され続けることに満足を示しています。
また、ウェイン・アンダーソン氏は、今後このような争いが起こらないようにするため、
自ら理事会に参加しました。
たった12インチの飾りをめぐって、数年にわたり膨大な費用と労力が費やされたこの事例は、
コミュニティのルール執行と個人の権利の衝突がいかにコスト高になるかを示す、
象徴的な出来事となりました。


