術後
日目
日目 (退院日)
まだ朝焼けが綺麗な時間帯に目が覚めた。
雲が秋を知らせている。
闘病の間に、季節は夏から秋へと変わろうとしていた。
今日が来た。
帰るんだ。
退院の朝は忙しい。
昨日の夜、お隣さんと朝のスケジュールを決めていた。
6:00
洗顔・化粧
化粧…久し振りだ～
なんか、気分が上がる
7:00
転棟前に私とお隣さんと同室だった方に、最後のご挨拶
辛い時を一緒に乗りきったお仲間だった。
私と４０歳差だけど、妙に気が合って、転棟してきてからは、お隣さんと３人談話室でよく女子会してたね。
優しい息子さんが、一日に何回もTELくれてたっけなぁ
リハビリに通って、私たちよりずっと元気に回復してる。肌艶も血色も誰よりもよくなって、退院はきっと、もうすぐだね
7:45
朝食
最後の“病院食”
ホントに、あなたには苦労させられたわ～
私の定番は“お茶漬け”になっていた。
退院したら、当分お茶漬けは食べなくていいな(笑)
8:15
転棟前の病棟へご挨拶
看護師さんもそうだが、手術をひかえた同室さんが、一昨日転棟したばかり。
お隣さんと挨拶にお邪魔すると、少し体調がよさそう
お互いに笑顔でお別れの挨拶が出来た。
手術を受けて、元気に地元に帰ろうね
大丈夫、大丈夫。大丈夫だよ
それから、初代同室のマダム。
お隣さんと別れ部屋を訪ねると、マダムは横になっていた。辛そうだった。
入院生活が長過ぎて、記憶が前後してしまっているのだろう。
前回私が訪ねたことや話をしたことなどは、忘れてしまっていた。
私がもうずっと前に転棟したことも、今日退院することもわからないようだった。
「退院するね」
」 と声を掛けると、驚いていた。
「手術を受けて、退院したら、手紙を書くわ。住所を教えてくれる
」
」 私は喜んで、自分の持っていたメモ帳に住所を書き、マダムに手渡した。
「いつになるかわからないけど、きっとお手紙書くわね。」
嬉しそうなマダム。
手紙が来るって信じて待ってる。
一日も早く元気になって、またあの美しい笑い声が聴きたいな
待ってるね。ずっと、待ってるよ
それから それから、エビメイシさん。
朝でも白い歯キラリの爽やかメンズは、シャンとした姿勢で私を見送ってくれた。
そして、
「(手術)頑張ります
」
」 と力強く宣言する。
頑張れ、お仲間
みんながついてる
ファイト～
9:00
会いたい人には会って、ちゃんとお別れの挨拶が出来た
病室に戻ると、お隣さんも着替えもメイクもバッチリ
いやん
人のこと言えないけど、女って化ける生き物だわ
デッカイ目が、更にデッカイ。
キラキラしてる
息子さんがイケメンなわけだわ
スラッと背も高いお隣さんは、パジャマのお隣さんとは別人。
綺麗よ～
私たちもスッカリ“普通の人”だね
そんなんしてるうちに、息子たちが迎えに来た。
…お隣さん、お別れだよ。
お隣さん、泣くでしょ。
泣いてお別れは嫌だよ。
私は笑ってお別れがしたかった。
「また明日ね～、バイバーイ」的な。
だから最後は、あんまり…いや、ほとんど言葉は交わさなかった。
私はお隣さんが大好きだ。
姉妹のような、友だちのような人生の先輩。
いつもシッポをパタパタ振ってる、人懐っこい“わんこ”のような人。
直ぐ泣く、泣き虫
素直で真っ直ぐな人。細やかで気遣いの人。
辛いこともいっぱいあって、一緒に乗り越えてきた同志。
もう泣いてるところは見たくない。
私たちらしく、笑顔で別れよう
さっ。
ナースステーションに退院宣言だ
ミラクルさんの
「ミラクル退院しまーす
」
」 に習って、
「ちびまるぱんだ、退院しまーす」
」と、約束通り宣言した(笑)
ありがとう、お仲間たち
ありがとう、看護師さんたち
ありがとう、先生方
ありがとう、草津総合病院
お世話になりました
ちびまるぱんだ、退院です