観終わった後は、
「えっ? これで終わり?」
と軽い肩透かしを喰らいました。
ついつい「君の名は。」的なカタルシスを期待してたんですね。
でも、何かが心に引っかかる。
そして、ジワジワと来る。
主人公、帆高が拳銃を撃った時の、狂気を孕んだあの眼が心に突き刺さる。
薄汚い欲望にまみれた新宿の街並み。
閉塞感の中で光を探す子供たち。
ますますきな臭くなるこの世界。
大人になるに連れ、人はどんどん牙を抜かれていく。
「人柱」になるつもりなんかなくても、実は搾取され自己犠牲を強いられているたくさんの人たち。
でも、それを考える時間も気力もない。
そんな世界を壊す鍵は、原始的な情動に突き動かされた、あの帆高の狂気を孕んだ愛なんだと思う。
不況しか知らない世代に安易に希望を持たせる終わり方ではなく、ズシリと重たい
「だいじょうぶ」
というメッセージ。
言葉にできない何かを、今はただそのまま感じていたい。
雨の中、空腹に震えていた可愛い仔猫が、ラストではでっぷりと逞しくなっていたのが、個人的には全てなんじゃないかと思ってしまう(笑)
しっかし、新海監督ってアグレッシブだなぁ。
「秒速5センチメートル」では、可愛い絵柄のキャラデザと、いいお話風の設定と演出でオタ男を引き寄せたクセに、モテない男の息の根を止める鬱ラストにしてて驚いたっけ。
あの時は、
「監督、不器用か!?」
って笑ったけど。
どうしたら売れるかとか興味ない人?
「君の名は。」でやっと王道に目覚めた?
な〜んて失礼なことをちょっとだけ思ってたけど、全然もっと計り知れない人だったんだ。
もっともっと遥か上から、この世界を神の視点で眺めて祈っているかのような。
だいじょうぶ
だいじょうぶ
だいじょうぶ
本当は不安だらけだ。
不況もテロも戦争も人の心が荒んでいくのも、全てが嫌だ。
そりゃさ、広大な宇宙の流れから見りゃちっぽけなことなんだろうけど。
だいじょうぶ……なのかな?
だいじょうぶ……と信じたい……。
だいじょうぶ…でありますように。