「Woman "Wの悲劇"より」
自分を責めて責めておかしくなっていた時、この曲を繰り返し繰り返し聴いていたら、自分にはどうしようもなかったのだと、もっと大きな流れ?力?そんな何かに突き動かされて生きてきたことを受け入れて、不思議に心が落ち着いてきたんです。
サビの部分の浮遊感のある壮大な宇宙と悠久の時の流れをイメージさせる楽曲と、普遍性のある深い歌詞と、薬師丸ひろ子の透明な歌声。
それらにとても癒されました。
これは、昔アイドルだった頃の薬師丸ひろ子が歌っていた曲です。
子供の時は何気なく聴いていたけれど、なぜ今こんなに惹かれるのかとググッたら、これ実は松任谷由実の作曲で、アイドル曲の域を超えた傑作と称されていたんですね!
当時の作曲家のクレジットは呉田軽穂(ユーミンが好きな女優のグレタ・ガルボから)名義。
楽曲提供した曲の中でユーミンが一番気に入っている曲なのだそうです。
私は作曲の知識がまるでないのでわからないのですが、メロディはもちろん、コード進行が特に素晴らしいのだとか。
コード進行って何?
そもそもコードって何!?
ってレベルなもので、少しだけ基礎的な説明を読みましたが、どこがどう凄いのかはさっぱり(笑)
コードとは和音のことで、それをどう並べて繋げるかがコード進行のようです。
それで作曲のプロの方の記事によると、サビの部分が当時ではあり得ない、今でも滅多にないほど斬新なコード進行だそうで、「松任谷由実はコード進行の鬼」と書かれてました(笑)
ユーミンは作曲の全ての理論を知った上で、その遥か上を行く物を創るそうで、それって理想的だなぁって思いました。
作詞は、松本隆。
当時、消えゆく運命の歌謡曲をずっと残る名曲にしたいと思い、松任谷由実に作曲を頼んだのだそうです。
ユーミンは歌謡曲とは一定の距離を置きたくて、呉田軽穂名義にしたと書いてありました。
サビの部分の歌詞が特に素晴らしいです。
ああ時の河を渡る船に
オールはない 流されてく
横たわった髪に胸に
降りつもるわ 星の破片
オールはない 流されてく
横たわった髪に胸に
降りつもるわ 星の破片
中島みゆきの「宙船」の歌詞と対極なのが面白いです。
その船を漕いでゆけ
おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶ者に
おまえが消えて喜ぶ者に
おまえのオールをまかせるな
同じ船の"オール"という言葉を使いながら、片方は自分の力で漕ぐことを、片方はオールがなく流されていく、と。
私は、自分の人生を、自分の力で、努力で、切り開かなきゃと思いながら、だけど自分の力ではどうにも出来ないことに打ちのめされて…。
がんばってもがんばってもどうにもならないこと、それらが人生には多すぎて…。
そんな時に、「Woman」の歌詞に癒されました。
どちらの曲も好きです。
どちらの歌詞も真実で、コインの両面で、同時にこの世界で成立している。
自分の内なる衝動に突き動かされて生きてきたこと。
自分なりにいつだって必死だったこと。
間違っていたことも含めて。
それら全てを受け入れて融合していく、そんな風に感じられる、そんな曲です。
つられて、この曲が主題歌の映画「Wの悲劇」も観ました。
薬師丸ひろ子演じる主人公静香は、女優になりたいというより、何かの力に突き動かされて女優にならなければと、運命に翻弄されているように感じます。
「昴」というマンガにこんな言葉があります。
世界のセレブリティ…
各界の超一流の人物たちとつき合うようになってから、私はたびたび感じてきた。
本当にその道で突き抜けた人物であればあるほど…
それを"やりたい"というより、
"やらなけれならない"、
彼らの横顔にふと、見えることがある。
やらされている
本人の意思を超越した何かに………
静香は、心の底から愛する恋人と結婚して幸せになりたかったんだと思います。
でも、女優の道を選び、別れを選んだ。
主題歌の歌詞は、別れの時に言えなかった静香の切ない心のうちなんですね。
たぶん、どんな人間も、自分で選んでいるようで、その実は……。
でも、それでよかったのだとやっと思えてきました…。