宇宙飛行士のソラは幼なじみのカンナと結婚した。カンナもJAXAで働いていた。
「君を一生、幸せにする。結婚してください」
ソラの真剣な言葉にカンナは涙を浮かべて「はい」と言った。
ソラは月面探査チームから外れて、地球勤務になった。
やがて、子供が生まれた。
ソラは子供にユーリと名前をつけた。
ユーリは成長してソラに言った。
「ぼくも宇宙飛行士になって、パパと一緒に働く」
ソラとカンナはユーリを大事に大事に育てた。
ユーリが中学生になったとき、ユーリは友達とケンカして孤立した。
ユーリは誰も信じられなくなった。
部屋のカーテンを閉め切って、部屋を真っ暗にした。
親とも話をしなくなった。
ソラはある日、「うどん作りをしよう」とユーリを誘った。
ユーリは、しぶしぶ部屋から出てきた。
ソラは、昔を懐かしみながら話した。
「昔、読んだ宇宙兄弟という漫画でね。閉鎖環境にいたムッタが仲間とうどん作りをする場面があるんだ。ムッタは、みんなと宇宙の話ができなくて、さみしい時期があった。宇宙のことを自分と同じくらい大好きな仲間と話ができて、涙が出るくらい嬉しかったんだ。パパやママも仲間たちと宇宙の話をたくさんして、夢を見て、挑戦して、いろんな思い出ができたよ。自分と共鳴できる仲間は、最高の財産なんだ」
ユーリは黙って聞いていた。
「ユーリは友達とケンカして、誰も信じられなくなってるかもしれないけど、友達だって、孤独かもしれないだろう? ユーリというかけがえない仲間を失いそうなんだ。ゆるせないかもしれないし、ゆるしてもらえないかもしれない。でも、心からあやまったら、何か変わるかもしれないだろう? このまま友達を失ったら、一緒に過ごす未来も失ってしまうんだ」
ユーリは力いっぱい、うどんを叩きはじめた。
「このやろう! このやろう!」
やがて、落ち着いて、泣き出した。
「あいつが悪いんだ。ぼくは悪くない。あやまるのはあいつのほうだ!」
ソラは優しく言った。
「ユーリも友達も悪くないよ。2人のためにできることを探してみよう」
ユーリは泣くのをやめた。
「ぼく、手紙を書くよ。また、仲良くなれるかわからないけど」
ソラはユーリと一緒にうどんを切った。
「うどんを切るときは、無心になるんだ。気持ちを整えて、美味しくなるように気持ちを込めて。手紙を書くときも、相手に届くように、気持ちを込めて書きなさい」
ユーリは久しぶりに笑った。
「パパ、ありがとう」
ソラは長ネギとうどんを煮込んだ。
出汁と麺つゆを入れて味つけした。
「ほら、シンプルなうどんが出来たよ。ママと一緒に食べよう」
みんなでうどんを食べた。
カンナは「美味しい」と言って泣いた。
カンナは、また、息子と一緒にご飯を食べられて嬉しかった。
ソラはユーリに言った。
「宇宙では、たった1つのミスが全員の命に関わる。だから、ケンカした後は、必ず握手して仲直りするんだ。お互いをゆるすことは、生き残るための勇気なんだよ」
ユーリはボソッと言った。
「うどんを整えるみたいに、友達との関係も整えられたらいいのに」
カンナは笑顔で言った。
「ママもうどん作りしたいな。ユーリと一緒に心を整えたい」
ソラが言った。
「よし、また、うどん作りしよう。今度はもっと上手くできるかな?」