昔々、あるところにキメツケがいた。

 
キメツケは、なんでも決めつけて、まわりが「違う、違う、そうじゃない」と説得しても話を聞かなかった。
 
キメツケは言う。
 
「これはこうだから、こうでなくてはならないのだ」
 
まわりは、キメツケのことを石頭(いしあたま)と陰口を言った。
 
キメツケはまわりを困らせ続け、まわりはキメツケを避けるようになった。
 
キメツケは孤独になった。
 
1人残った奥さんにも、決めつけて苦しめてばかり。
 
そんなとき、奥さんは友人からキリカエ先生を紹介された。
 
「奥さん、このキリカエ先生に頼んでみて。すごい人なんだから」
 
キリカエ先生が家に来た。
 
キリカエ先生は、キメツケに言った。
 
「あなたの考えはよくわかりました。私はそれを否定するつもりはありません。ただ1つだけ、お願いがあります。『〜だからこそ』を口ぐせにしてください。これは幸せになる魔法の言葉です」
 
キメツケは「魔法? なんだそれ?」と思った。
 
……◯☓▲■だからこそ…
 
変化は起きなかった。
 
「キリカエ先生、何も変化は起きないですよ」
 
キリカエ先生は言った。
 
「心のチャンネルを切り替えるんですよ。今のままではあなたはもっと孤独になります。奥さんももう限界です。チャンネルを切り替えられたら、あなたの人生に新しい景色が見えますよ」
 
キメツケは奥さんを失いたくないと思った。
 
……だからこそ、だからこそ…
 
キメツケは、チャンネルを切り替えることは、今の心の場面から、別の視点になることだと気づいた。
 
決めつけて、固定されていた心から少しずつ距離がとれていく。
 
キメツケは奥さんにイラッとして、いつものように説教しようとした。
 
そこでキリカエ先生の言葉を思い出してストップした。
 
……だからこそ…
 
奥さんに文句を言いたかった。
 
改めて欲しかった。
 
自分の思うように動いて欲しかった。
 
……だからこそ、今までのように奥さんを苦しめるんじゃなくて、楽にさせないと
 
キメツケは、文句を言うのをやめた。
 
奥さんは、キメツケのイライラが収まったのを見て安心した。
 
キメツケは少しずつ変わっていく。
 
あまり怒らなくなった。
 
文句を言おうとしたとき、ストップするようになった。
 
あるとき、キメツケは奥さんに言った。
 
「お前と結婚するとき、お前を幸せにすると誓った。その初心を思い出したよ。俺は自分のことばかり。お前に甘えてばかり。結婚してから、成長するのをサボっていた。本当は、いつまでもいつまでも成長して成長して、お前をもっともっと幸せにしてあげなきゃいけなかったんだな」
 
奥さんは泣いた。
 
 
 
#創作
#メタ認知
#リフレーミング