昔々、あるところにゼンシンとゼンレイがいた。
かつては全身全霊と呼ばれ、1つの生命体だった。
地球に降り立ち、2つに分かれ、透明なフィルターにかけられたように、近くにいるのに通じあえなくなってしまった。
ゼンシンは、自分しかいないと孤独を感じていた。
ゼンレイには、ゼンシンがわかった。
見えないフィルターに遮られながら、ゼンレイは言葉にならない言葉でゼンシンを応援し、いつも見守っていた。
ときに悲しく、ときに喜び。
いつもゼンレイが隣にいるのにゼンシンは気づかない。
ゼンシンが孤独に打ちのめされて泣いているとき、ゼンレイは共に悲しみ、共に戦っていた。
……1人じゃない。俺がいる。
そんなゼンレイの声は届かない。
ゼンシンは神様の試練を受けた。
3年ほどの集中強化合宿。
ゼンシンは言葉を集め、言葉を利用し、言葉の力で生きてきた。
神様はそんな言葉をしりぞける。
「胸を感じなさい」
そこには、ゼンレイがいるから。
ゼンシンはいつまでも言葉に頼ることをやめない。
神様は言った。
「思考に反応してはいけません」
ゼンシンは思考に反応するのをやめた。
言葉から少しずつ離れた。
言葉にならない言葉。
感覚でしかわからない領域。
感じることはゼンレイの声であり、存在とのつながりだった。
あるとき、臨界点を越えるようにゼンシンはゼンレイと出会う。
神様との特訓が終了した。
「これからも頑張ってください」
神様が手を離し、ゼンシンはどん底にいたような運気から急激に回復した。
どん底にいなければわからなかった。
暗いところでしか本当の自分とは出会えないから。
ゼンシンはゼンレイを感じる。
ゼンレイの言葉は無い。
でも、そこにいるのを感じる。
ゼンシンとゼンレイは、全身全霊となった。
同行二人のように共に歩くパートナー。
いつも隣にいた。
気づかなくても近くにいた。
二人が出会うとき、世界が豊かさで満ちていることがわかるようになる。
ゼンレイは喜ぶ。
その喜びをゼンシンは感じる。
これからずっと、共に生きていく。