昔々、あるところにミオトシがいた。
ミオトシは、よく仕事で注意された。
見落としが多く、仕事の完成度が低い。
先輩から「よく確認するように」と何度も何度も注意された。
ミオトシは、仕事を終わらせる事ばかり考えていた。
ただ、やる。
考えるのは、叱られたくない事。
表面をなぞるように見るだけで、細かいところを凝視するような注意深さに欠けていた。
ある日、先輩から「指差し呼称しなさい」と言われた。
ミスが減るから、と。
ミオトシは、どんな仕事でも指差し呼称をして、魔法をかけるようにそのものに指を差した。
指差しとは、一点に集中すること。
意識が集まり、注意力が高まる。
ミオトシは、見るとは、ただ、見るのではなく、解像度高く見ることだとわかった。
例えば、テーブルを拭くとき、ただ、拭くのと、汚れを見ながら拭くのとでは違う。
細かなところまで見ることが、ミスを防ぎ、仕事の完成度を高める。
指差し呼称をはじめたミオトシは、見落としが劇的に減った。
先輩から褒められた。
「別人みたいになったな」
ミオトシは、指差しの魔法使いになった。