昔々、あるところにマチオがいた。
マチオは人見知りするタイプだった。
人に壁をつくり、簡単に打ち解けなかった。
いつも警戒し、距離を置いた。
自分を守るために。
傷つかないように。
そんなマチオの壁を崩すのはいつも相手からだった。
相手から積極的にアプローチされると、マチオはいつか防御を解いて打ち解ける。
心を開いたマチオは、相手と仲良くなれる。
マチオは、いつも待ちの姿勢だった。
そんなマチオが自分から積極的に動いたことがあった。
新入社員の佐々木リコ。
笑顔がかわいくて、マチオは一目惚れした。
リコのインスタ、フェイスブック、エックスを名前で検索した。
情報を集めた。
会社で、リコに話しかける。
その瞬間、バリバリと壁が破ける音がした。
「佐々木さんって、ほゃららら県の出身なの?」
わかりきっていたが、とぼけて聞いた。
「どの辺り?」
「ほにゃ市です」
「あー、下のほうの」
熟知していたが、あえて聞いた。
「はい。下のほう」
市の場所を下というマチオの言い方がおかしくてリコは笑った。
その時、マチオはリコと心がつながった気がした。
「K-POP好きなの?」
「はい。なんで知ってるんですか?」
「フェイスブックに書いてあったから」
「なんで、フェイスブックで検索したんですか?」
わたしのこと好きだから?
暗に聞かれた。
マチオは答えられなくて逃げた。
「あ、仕事だからまたね」
勇気を出したマチオとリコのファースト・セッション。
人見知りの壁を破ったのは、リコを知りたかったから。
知ることができたのは、マチオの新しい一面。
恋は、人を変える。