先日、祖父の葬儀について書きましたが、
今日は、施設で最期を迎えた祖父に、孫の視点から思ったことを書きます
※この記事も、死についての直接的な表現が出てくるため、苦手な方はご注意ください。
祖父は70代で認知症になってしまい(その前から兆候はありました)、最初は家で介護していましたが、
親が体調を崩したり、そのタイミングで気になっていた老人ホームにちょうど空きが出たり…とタイミングが重なり、
約9年前に特別養護老人ホームに入りました。
特養に入る時、「入居後は、トラブルや体調不良時をはじめ、すべての判断・責任を施設に委ねること」「家には二度と帰れない」といった誓約書に親がサインしたそうですが、
その誓約書にサインするのはものすごく勇気がいったそうです。
実際、祖父を施設に預けた後しばらくは、「本当に良かったのだろうか、この判断は間違っていなかったか」と何度も考え込んでしまう親の姿を見ました。
なんていうか、介護を放棄したように思えて、ひどいことをしたんじゃないかと思ってしまいますよね…。
でも、施設に預けた時、家での祖父は、
家族の名前はほとんど忘れてしまって、排泄もお風呂も自分ではできなくなり、さっき食べたご飯や薬もすぐ忘れてしまう。
温度感覚や時間感覚が無くなってしまって、熱すぎるコタツに入り続けたり、夜寝ても23時ごろに「おはよう」と起きてきてしまったり…。
私の親も、自分の親が認知症になることをなかなか受け入れられず、「なんで!?」とイライラしたり怒ってしまったり。
家にいる時のおじいちゃんは、いつも困ったような、不安な顔をして過ごしていました。
徘徊はしませんでしたが、思いついて車を運転してしまったり…(鍵を隠していたのに見つけてしまったそう。)
家で介護するのには、命の危険もあったと思います。限界だったと思う。
特養に入ってからのおじいちゃんは、とても楽しそうで、穏やかでした。祖父の場合は、ここが家なのか外なのかもわからなくなってたと思うので、「今日からここで過ごすんだよ」と伝えても「そうか〜!」とすんなりだったようです
いつも穏やかだったおじいちゃん。歳を取ると性格が出ると言いますが、認知症になってもずっと穏やかなおじいちゃんが大好きでした
うちがお世話になった特養が、プロ意識にあふれたスタッフさん達で…!
利用者さんには必ず敬語だし、いつ行っても部屋が綺麗だし。
自分でできることはなるべく自分でしてもらって。
なにか気になることがあると、すぐ家族に連絡をくれて。
施設に伺うと、その素晴らしさにいつも涙が出てしまいました。
仕事とはいえ、私のおじいちゃんにこんなに親切にしてくれて。感謝感謝でした。
プロに一日中しっかり管理してもらえて、ご飯も美味しく食べられて。親も、余裕が無く苦しそうだった介護期間からは考えられないほど、いつも祖父に会いに行くのが楽しそうでした。
亡くなる少し前、「いよいよだと思う」と施設の方が連絡してくださり、
毎日のように祖父に会いに行くことができました。
この特養では「延命治療は一切しない」という方針だったので、点滴も一切無し。治療の跡もない綺麗な身体のまま、自然に命の終わりを迎えました。
最期は苦しそうな呼吸で、もう目も開けられないでいたけど、「耳は亡くなってからもしばらく聞こえているんだよ」とガンの漫画で読んだことがあったので、
「おじいちゃん、ありがとうね。小さい頃、おじいちゃんがいつも習い事の送り迎えしてくれたから、私は今演奏家になれたんだよ。本当にありがとう。」と、とにかく後悔ないように、感謝を伝えまくりました。
「話しかけると頷いてくれますよね」とスタッフさんが元気付けの声掛けをしてくれました
連日、祖父の孫や子どもたち、兄弟が面会に行っていたら、「〇〇さん家は温かいですね」と施設のスタッフさんに言われたので、
きっとこういう時も全く会いに来ない家族もいるんだろうな…と思いました。
そして、遠く離れて暮らす祖父の弟さんに、最近覚えたてだというLINE電話で映像を繋ぎ(というか、このためにLINEの勉強したんじゃないかというくらいのタイミング…!)、
祖父の妹さんがやっと面会に来られた後(これも、ちゃんと待ってたんだね…というタイミング)、
翌日の朝に、亡くなったとスタッフさんから連絡が入りました。
最期の瞬間は看取れなかったけど、私はすぐ駆けつけられたので、まだ身体が温かい状態のおじいちゃんに会うことができて
そこから、施設の専門の方が、身体を綺麗にしてくれました。身体を拭いて、服を脱がせて(ビリビリ破いたりしないんですね…!綺麗に脱がせてくれました)、綺麗な服を着て、入れ歯も入れて、顔に少し血色の良くなるクリームを塗ってくれて。
その後の納棺師さんに、「こんなに丁寧な処置をしてもらっているのはめったに見ない」と言ってもらいました
特養から出る時は、スタッフさん全員で見送ってくださり。親が「今まで本当にありがとうございました。」とお礼をしている姿はグッときました
その後、葬儀が終わって落ち着くまで、施設の部屋はそのままにしてくれていて片付けに伺った時、「私たちスタッフも〇〇さんやご家族に助けられていた所もあったので…。寂しいです。」と伝えてくださいました
今回、私が思ったことを親に話すと、親も同じことを思っていたようでした。
亡くなる前の特養は、自然の見える素敵なお部屋で、静かで穏やかな時間が流れていて。
廊下に出れば仲間がいて賑やかで、部屋にいてもスタッフさんがこまめに声掛けをしてくれて。
家族もたくさん会いにきてくれて。
私が想像していた施設での最期はもっと孤独で悲しいかと思っていたので、今回祖父の最期を見て、
「こんなに穏やかな最期を迎えられるなら、私も老後は施設っていうのも素敵だな」
と思いました。
と言っても、私の老後は少子高齢化が進みすぎて、どうなってるかわかりませんが
祖父を見てくださった方々には、本当に感謝です。ありがとうございました。