ようやく年内の仕事が終わったので年末に出向いたヲタ現場の日記を少しずつでもアップしていけたらと思う。

まずは先週、武道館で行われた東京女子流から。

東スタンドと西スタンドの一部が黒い布で覆われていたものの、アリーナ、スタンドともに場内はほぼ埋め尽くされている。動員人数はざっと6000人くらいだろうか。(公式発表は6500人)

発表の段階から苦戦が予想された東京女子流、初の日本武道館公演だがフタをあけてみればこれは大健闘といっていいだろう。それどころかワンマンで6000人という数は動員数だけでみればAKB、ももクロに次ぐ第三極ともいえる数字である。

ところが女子流の知名度がAKBやももクロのように世間に浸透しているのかというと正直かなり疑わしい。というより、ほとんど知られていないのが実状だろう。

では何故、ヒット曲は皆無、テレビで見ることもほとんどない彼女達がこれだけの人数の客を武道館に集めることが出来たのか?

簡単にいうと現在のアイドルブームの恩恵にうまく乗っかったということではないだろうか。普段は他のアイドルのヲタをやっているけど女子流にも以前から何となく興味を持っていた。で、せっかくの武道館だし記念に観にきた…。なんていう武道館特需で、この日、初めて東京女子流のステージを観たという人は結構、多かったのでないだろうか。

東京女子流の商品性というのはアイドルらしからぬクオリティの高い楽曲とその曲に負けないだけの歌唱力、そして中学生とは思えないような圧倒的なダンスのスキルでそれらを表現していくというものである。またヲタに媚びるような俗っぽいバラエティやグラビアの仕事はほとんど行わずに一貫して音楽活動だけを中心に据えた活動形態をとり、それは他のアイドルとは明らかに一線を画したアーティスティックなグレード感を彼女達に与えてきた。

そして今回のコンサートはそんな東京女子流の結成以来3年間に及ぶ「音楽活動」の集大成ということになる。

舞台の上にはバックバンドが演奏で使用する楽器やアンプなどの機材が置かれており、どこか通常のアイドルのコンサートとは違った雰囲気が漂う。

ほぼ定刻通りにスタートしたコンサートのオープニング曲は「Limited addiction」。

武道館の一曲目にしてはかなり意表をついた選曲だと思ったが、深読みすると武道館だからといって必要以上にドラマティックに盛り上がる展開を意図的に避けているようにもとれた。

その後も新旧取り混ぜ、自分達の持ち歌を順に披露していくのだが、基本的なポテンシャルがそこらへんのアイドルとは全然違っているため、観ていて危なっかしいような場面がまったくない。それはどこかイヤミに感じてしまうほどニクいパフォーマンスである。

そしてアイドルにとって初めての武道館ともなれば普通はウェットな展開になり、曲の途中で感極まって歌えなくなったりとか、アンコールで泣き出したりとか普通に起こりそうなものだが、そういうことは一切起こらなかった。(そういうことを期待していた観客はきっと多かったと思うが、その問題は横に置いておく)

過去に武道館で行なわれたアイドルのコンサートの中でも、ここまでクールに、そして飄々とステージをこなしたアイドルというのはちょっと記憶にない。

もっとも武道館という器に特別な感慨を抱いていたのは20世紀のアイドルまでで、平成生まれの現代っ子の彼女達にしてみれば武道館のステージもラクーアのステージもそうたいして違いはないのかもしれないが…。

デビュー以来3年間、常に優等生的な模範解答を書き続けてきた東京女子流が、またしても完璧な解答を示してみせたといえるのが今回のライブだったが、ひとつだけ残念なことがあった。

それは音響である。ハッキリ言うとこんなに音の悪いコンサートは久しぶりに体験したような気がする。

この日、PAから流れていた音は30年前の武道館の音であり、せっかくの良いコンサートが結果的に最低の音響で水を差されてしまいそれだけが本当に残念だった。
六本木といっても繁華街を外れると意外に静かな街であり、今回はじめて行った六本木ミュージアムという会場も緑地に囲まれた非常に落ち着いた場所にあった。

建物の階段を降りるとやたらと広いロビーがあり、そこで客は待機し係員の呼び出す整理番号に従ってフロア内に入場するようになっていた。

場内のフロアには椅子が敷き詰めてあり上手側だが前から5列目を確保することが出来た。すし詰め状態のオールスタンディングを覚悟していたのでこれには助かった。考えてみるとアプガのライブを椅子のある現場で観るのは初めてである。

残念ながら今回の2ndライブはソールドアウトには至らなかったようだがイス席は完全に埋まりフロアの後方には立ち見の客が何重にも溢れていた。

ステージ上にはセットらしいものは何ひとつ置かれていない。それは単にセットを組む予算がないだけなのかもしれないが、千人近いハコでここまで何もないステージというのもちょっと珍しい。

この日、彼女達がステージで使用した小道具はサイリウムと佐保ちゃんが自己紹介のときに空手の演舞で真っ二つに叩き割った木の板だけである。

今回の公演のタイトル「2ndライブ 六本木決戦(仮)」が象徴しているように、ステージ上にあるものはメンバーの身体だけであり、余計なギミックが何ひとつない状態でアプガのメンバーは文字通り観客との決戦に挑む。

この日のライブはまさしくアップアップガールズ(仮)vs観客といった真剣勝負の様相を呈していた。

コンサート開始からアンコールの最後に舞台袖に消えていくまで、時間にして二時間以上、ほとんど休憩らしい休憩もなくライブは進行していく。

アプガメンバーの驚くべきところは基本的にすべての楽曲がアップテンポなナンバーで占められているため、メンバー全員がコンサートの最中、まったくといっていいほど休む間もなく踊り続けている点である。

普通、こうしたワンマンライブの場合、途中にメンバーのソロやしっとりとしたバラード曲を挟むことによって、演出上の緩急というかメリハリをつけたりするものだが、そういった小細工など無用とばかりにこの日のアプガは最初から最後までハイテンションのまま乗り切ってしまうという、見方によってはかなり強引な手法がとられていた。

つまりオープニングの「Going my アップ」からコンサートはいきなりクライマックスを迎え、そのままの状態が二時間以上に渡って最後まで維持されていく。

従って今回のライブはこれといった見せ場はなく、すべてが同じテンション、同じパワー、同じエネルギーで流れていくという単純な構造で成り立っていた。

言い換えるとすべてが見せ場だともいえるが、肝心なのはそれらすべてのパフォーマンスがメンバーの気力と体力のみによって支えられていたというところだ。

この日、メンバーの佐藤綾乃はライブの途中でノドを潰してしまい、途中からまともに歌えない状態になってしまった。

最後の挨拶のとき、彼女は涙ながらにかすれた声を振り絞って観客にそのことを謝罪していたが、会場に集まったヲタで彼女を責める者など誰一人として存在しない。

この「決戦」においてもし一人だけ勝者を選ぶとしたら、ボロボロになりながらも気力で最後までステージを務めあげた彼女ではないだろうか。

こういった想定外のアクシデントが時としてイレギュラーな感動を呼ぶというのがアイドルの素晴らしさであり、同時にアイドルというジャンルの持つ特異性をよく表していると思う。(例えばの話だが、彼女がもしアイドル歌手ではなくテノール歌手やオペラ歌手であったなら、ノドを潰すなど絶対に許されない失態だった)

コンサートの終盤には来年の予定もいろいろと告知されたが、その中でも特に注目したいのが、2月から行われるT-Palette Recordsが主宰する「全国対バン行脚(仮)」だろう。

これはアプガが主要都市に出向き、そこのご当地アイドルと対バンでライブを行う、すなわちアウェーの現場に乗り込みサシで勝負をするというものらしい。

新潟がNegicco、仙台がドロシー、福岡がLinQ、松山がひめキュンフルーツ缶といったところまで対バン相手が確定しているらしいが、東京はまだシークレットだということ。

会場がこの日と同じ六本木ミュージアムだということを考えると、そこそこネームバリューのあるグループと「対戦」するような気がする。

実現の可能性でいうとレーベルメイトのバニラビーンズあたりが適当だが、それではひとつも面白くない。

ここはいっちょう乃木坂46か私立恵比寿中学あたりと対戦するというのはどうだろうか。アイドルヲタ的な視点で見ると、このへんのマッチメイクはなかなかスリリングで面白いと思う。

あるいは、ある意味、同門対決ともいえるスマイレージあたりも面白い。

何にしてもアップアップガールズ(仮)、来年も今年以上に我々を楽しませてくれそうで、今から待ち遠しい限りである。
店内に入るとフロアには大音量でアイドルの曲がかかっていた。

よく見るとDJを務める掟ポルシェが後方のブースでミキサーを操作しながらフロアの客を煽っている。

祝日だとはいえ真っ昼間から何をやっているんだという気もするがハイパーのメンバーが登場するまでの余興にしてはなかなか面白い。

先月、新宿のHMVで行われた新曲のリリイベに参戦したとはいえ彼女達のライブそのものを観るのは8月のTIF2012以来ということになる。しかも今回は生バンドを従えてのワンマンライブなので自然と期待も高まってくる。

掟ポルシェの前説に続いてバンドのメンバーが登場し楽器を手にしていきなりブラックサバスの「アイアンマン」を弾きだす。意表をつく展開に思わず興奮するが「アイアンマン」はイントロだけで曲はお馴染みの「UWFメインテーマ」へと変わりハイパーヨーヨのメンバーが登場する。

ハイパーのメンバーもバンドのメンバーもお揃いのTシャツを着ていて、そこには矢沢永吉のロゴマークである「E.YAZAWA」のデザインをパロった 「HY4Z4YH」のロゴマークが…これにはウケた。

TIFの物販ブースに並んでいたグッズもほとんどすべてが有名バンドのパロディだったが、今回の矢沢永吉モデルもなかなか秀逸な出来だと思う。

どこまでがふざけていてどこからが真面目なのかよくわからない彼女達のライブだが、やはり元祖オルタナ系アイドルと呼ばれているだけあって、実に堂々としたパフォーマンスを展開し、単純な言い方をすると歌にしても踊りにしてもあるいはキャラクターづくりにしてもすべてがプロフェッショナルに徹している。

ライブのセットリストは先日、リリースされたベストアルバムの曲順通りに進行し、まるで自らの歴史を総括するかのような内容になっていた。

最近、彼女達は大滝詠一の「福生ストラット」の替え歌というかアンサーソングを歌っていると聞いていて、正直それを聞くのを楽しみにしていたのだが残念ながらこの日は歌われなかった。(しかしこんなマニアックな歌を披露したところで果たしてどれだけのお客がそれを知っているだろう?)

ハイパーのバックを務めるバンドの音も余計な主張がなく、それはアイドルのバックバンドとして実に正しい姿勢に映った。

アンコールでは掟ポルシェも一緒にステージに出てきてハイパーのメンバーと一緒に盛り上がり、舞台の上はほとんど宴会のようなノリになっていた。

客席も普通のアイドルのライブとはまた違った不思議な一体感があり、あれはあれで悪くはないと思う。

前にも書いたように現在のアイドルシーンというのは、以前までのような古典的なアイドルのスタイルや価値観だけではとても括りきれないような状況になってきている。

そんな中、ハイパーヨーヨは確固たる自分達のスタイルを持っているし現在のサブカルブームが追い風となってタイミングさえ会えば今後、彼女達が大化けしていく可能性は十分に秘めていると思う。