メタルギアソリッドΔ スネークイーター(MGSΔ)
METAL GEAR SOLID Δ SNAKE EATER(2025)
※ネタバレなし。
【「保守的なリメイク」、なのか?】

2004年発売のMGS3を現世代最高水準のグラフィックでリメイク。METAL GEAR SOLID Δ。本作はかつての制作体制における騒動にまつわる噂が広まり、ユーザーへの不信感が生まれたという背景もあり、オリジナルのゲームに忠実な、グラフィックや操作性の改善の身に注力した、いわば保守的なリメイクとしての方針を持つ作品です。
賛否を呼んだ制作方針は、果たしてどのように作品に寄与したのでしょうか。
【「操作性の向上」がもたらすもの】

実際にプレイしてみると、原作に驚くほどに忠実。マップ、敵の兵士の配置、プレイヤーのアイテム、移動速度に至るまですべて同じ。
しかし、MGS3の3DS版でも採用されたMGS4由来の肩越し視点の実装により操作性は大幅に上がっています。このような書き方をすると操作性のみか、と思われるかもしれませんが、操作性が上がることで、当時の原作に秘められた戦略性を更に掘り下げたプレイが可能いなっています。
特に新しいアクションが追加されたわけではありませんが、操作性の向上により、よりスムーズに敵と自分の位置関係を把握しつつ裏をかく動作がスムーズに行える。ゲーム性について言えば上々のブラッシュアップと言えるでしょう。
【「原作の底力」が浮き彫りに】

特に驚かされたのが、衣擦れや金属の接触音、落ち葉を踏み抜く足音、自然の環境音等の「効果音」。
「効果音」は原作そのままですが、当時と比べ遥かに向上したグラフィックと合わせても全く遜色がない。当時の原作が如何にこだわって「効果音」を作成していたかが分かります。
そのグラフィックですが、自然環境はもちろんのこと、スネーク達登場人物のまとう衣装の隅々に至るまでブラッシュアップされています。かつての原作の時点で衣装や小道具を、現実を想定したリアリティラインで巧妙に制作していたからこそできたことでしょう。
上述した「効果音」や「衣装」に注目すると、MGSデルタは逆説的にオリジナルのMGS3の偉業を証明しつつ、現代のゲームと比べても遜色ない形でオリジナルの再構築に成功したと言えます。
前提として、プレイヤーの不信を招いたしまった状況下において、本作の制作チームは最善手を成したと言えるのではないでしょうか。
【大仰な演出という「戦略」】

グラフィックの向上により、デモシーンは大変見ごたえが出ましたが、PS2水準のグラフィックを想定した当時のカメラワークや演技を高画質とすると、どこか舞台演劇のような大仰な印象を受けます。MGSVが高画質によるリアリティラインの向上を予測して抑え気味の演技と演出としたのは対照的です。
しかし、MGSデルタの大仰な演出もこれはこれとしてゲーム的なハッタリの効いた華やかな演出として受け入れられるのではないでしょうか。「FF7リメイク/リバース」もリアリティを犠牲とすることを理解した上で、敢えて大仰な演出に舵を切りました。
リアルな演出は、他の写実的なゲームだけでなく、実写の映画というような他分野とも競合する「レッドオーシャン」。ゲームは本作の様にマンガ的な円演出を追求するのも一つの戦略だと思います。
フォトモードの実装も向上したグラフィックを実感するための良い追加要素だったと思います。
【「肩の力」を抜こう】

個人的に本作の制作方針には理解は示しますが、あえて要望を述べるなら次の通りです。
オリジナル版のゲーム性、テンポを崩したくないという方針は分かりますが、原作を何週もした身からすると全く同じマップのみというのは物足りない。
2週目以降に寄り道的に追加される新マップなどがあっても良かったのではないかと思います。原作の時点でも、そのような寄り道的なマップはいくつかあったわけですし。
また、ヴォルギン戦でのCQCの追加やザ・ボスが、スネークの持ち物に細かく反応してくれる小ネタの追加は大変に素晴らしかったため、そのような小ネタがもっと多ければなおよかったと思います。
後はDLCでソリッド・スネークのコスチュームなどがあっても良かったかも。本作に実装されたMGSPWの衣装はPW時代のビッグボスがMGS3にタイムトラベルするというようなロールプレイのアイテムとして楽しめました。
メインスタッフの離脱により、シリーズ正統続編の制作が困難となった今、そのような肩の力を抜いたファンサービス的要素に舵を切るのも一つの道では、と思います。
総合すると、未プレイの方には遊びやすい入門編、既プレイの方には当時を振り返りつつも見どころ満載のファンディスクとして楽しめる作品ではないでしょうか。
【「FOXHUNT」実装!】

また、本作には発売から期間を開けて「FOXHUNT」なるオンラインモードが実装されました。こちらは全く新規のゲーム性ながらとても面白い。
従来のメタルギアオンラインが「メタルギアの操作性やかくれんぼのエッセンスを交えた、対戦ゲーム」なら、FOXHUNTは「メタルギアのかくれんぼ要素をそのままの多人数対戦ゲーム」と言えます。
メタルギアオンラインも名作ですが、FOXHUNTはよりメタルギアらしいオンラインゲームと言えます。
オートカムを活かした騙し合い、かくれんぼ戦略は状況により最善手が移り変わり、ユーザーに高度な戦略を要求。その読み合いにまつわるスリルは唯一無二です。
また、戦いに臨む際のバディとの連携は、MGSPWの協力プレイを彷彿とさせます。PWの協力プレイは大いに楽しんだものの、続編のMGSV:GZ、MGSV:TPPでは廃止されてしまい寂しさもあったのですが、FOXHUNTにて当時の高揚を思い出しました。
(今思えばMGSVの「バディシステム」はMGSPWの「協力プレイ」の代替でもあったのでしょうか)

また、MGS3由来のキャラクターが大量にプレイアブルになる点も最高でした。特にザ・ボスがプレイアブルとなるのがアツい!MPO未参戦だったザ・ボスがプレイアブルとなる作品は、本作を除けばモンスターハンター ポータブル3rdのコラボ衣装くらいだったのではないでしょうか。
(ザ・フューリーやヴォルギン等が未実装なのは体格の違いがかくれんぼのゲーム性に有利か不利かの違いを生んでしまうからでしょうか?)
【MGSVと合わせてオススメ!】

FOXHUNTの欠点としては、純粋な対戦モードがないことですが、それは現在もサービス継続中のMGSVのオンラインモードで保管できます。
MGSデルタは、いわば一本道、「リニア」なメタルギアの究極到達点。一方のMGSVは「オープンワールド」のメタルギアの究極到達点。オンラインモードにおいてはMGSデルタは協力プレイ、戦略的かくれんぼの「静のゲーム」、MGSVは対戦プレイの「動のゲーム」。
MGSデルタとMGSVを合わせてプレイして、相互補完することで、現時点のMGSのゲーム性の神髄を網羅できるのではないでしょうか。
後はストーリー面も網羅したいため、MPO、MGS4、MGSPW、MGR等々含めたマスターコレクションvol.2の発売が待望されますね。


