METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS 感想、解説、考察、評価

※ネタバレあり。

【「サンヒエロニモ半島事件」への言及】


METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS 本作は2006年にPSPで発売された作品だが、最も争点となるのは次の点だ。オプスは正史なのか?

 

本作はMGS1~4、MGSPW、MGSVとは異なり純粋な小島秀夫監督作品ではない。正史シリーズは互いにキャラクターや設定を共有し、作品間で互いの事件に言及し合うがOPSの「サンヒエロニモ半島事件」が多作で言及されることはほぼない。

しかし、オプスが完全な外伝かと言われれば、それもまた違う。本作は正史同様、当時の小島プロダクションにより作成されているし、小島監督も監修という立場で限定的ではあれど本作に関わっている。

 

MGS4のACT3では「サンヒエロニモ半島事件」を描写した絵画が展示されている場面があるし、ピースウォーカー冒頭ではカズヒラ・ミラーが「サンヒエロニモ半島事件」に一言ではあるが言及している。

(ゲーム作品ではないが、野島一人著の小説版「メタルギアソリッド:サブスタンス1」「メタルギアソリッド:ピースウォーカー」ではオプスの一件と思しき記述もある。)

【「年齢」の矛盾問題】


他作品に、間接的な繋がりがあるのならオプスを正史としても良いのではないか。そのような意見もあるだろう。私も正史としてよいのではないかと思うが、難しい点もある。

本作にはヌル=グレイフォックスの若き日の姿が登場する。ビッグボスとの関係性も描かれ、ファンには嬉しいクロスオーバー要素だが本作のヌルが、後のグレイフォックスに繋がると考えると年齢面で矛盾が生じる。

ただ、この点はそこまで気にするものではない。なぜなら正史であるMGS2とMGSPWにも年齢にまつわる矛盾はあるからだ。MGS2でリキッド・オセロットは「恐るべき子供達計画」が「50代後半」のビッグボスの体細胞を使ったと言う。しかしMGSPWで明かされたビッグボスの年齢を考慮すると「恐るべき子供達計画」はビッグボスは「37歳」の時の計画だと考えられる。

年齢の矛盾問題など、あくまで些細な問題であろう。

しかし、公式は一向にオプスを正史とはみなさない。その決定的理由は何なのだろうか。

【「心情」の連続性】


それはオプスとピースウォーカーで「ビッグボスの心理が繋がらない」点だ。

ビッグボスは「スネークイーター作戦」で偽装亡命したザ・ボスの抹殺を余儀なくされた。この一件は彼の心に大きな傷を残し、ビッグボスは地位と名誉を棄て、アメリカを出奔する。

この点はオプスとピースウォーカーで共通している。問題はそのあとだ。

オプスのビッグボスは、なんというか、心理的にカラっとしている。ザ・ボスの一件を後悔しつつも、ジョナサンの説得の際には「自分から」ザ・ボスに言及し、ジョナサンに忠義の意味を問う。初対面のキャンベルにもフランクに接しているしMGS3のユーモラスなネイキッド・スネークをそのまま延長したようなキャラクター性だ。

オプスのビッグボスはザ・ボスの一件を後悔しつつも、あくまで前向きにとらえなおそうとして、その意義に向き合っている。

一方で、ピースウォーカーのビッグボスは、ジメっとしている。ザ・ボスの一件が後悔が重くのしかかり心を閉ざしている。腹を割って話せるのは戦士として苦難を共に乗り越えたミラーくらいだ。少女であるパスにも初対面では塩対応だったし、ザ・ボスの一件を巧みに交渉に使うガルベスの甘言には良いように乗せられてしまう。

ピースウォーカーのビッグボスは、ザ・ボスの一件を消化しきれず、心の明確な弱点としてしまうほどに後悔している。

MGS3とMGSPWの間にオプスの存在を仮定すると、ビッグボスの心理の変化が微妙に繋がらなくなってしまう。年代等、細かい設定の矛盾なら気にしないで済むのだが、心理描写の一貫性が崩れるとなってしまうとオプスを正史とするのは難しいだろう。

私もオプスは好きだ。二転三転する黒幕や、脱出劇をベースとした緊張感と言い、単体のポリティカル・サスペンスとして最高峰のクオリティといえる。しかしメタルギアサーガの一作とするには上述の通り、心理の継続性に疑問が生まれてしまう。

また、「ザ・ボスの偽装亡命」の一件にまつわる描写も難しい。オプスにおいてはジーン、及びカニンガムが「ザ・ボスの偽装亡命」の真相を知っていた。(カニンガムは序盤は知らない様子であったが、終盤でザ・ボスは「ザ・ボスは見殺しにされた」と言及している。)

一方で、ピースウォーカーにおいてはストレンジラブが「ザ・ボスの亡命の真相」を聞き出すためビッグボスに執拗に拷問を行う場面がある。「ザ・ボスの偽装亡命」という真相に、「スネークイーター作戦」の表面的な立案者であったコールドマンでさえアクセスできなかったからだ。

上述したように、よくよく考えると「ザ・ボスの亡命の真相」がどの程度のレベルで秘匿されていたのかに違いが生じている。

 

オプスではジーンやカニンガムのような優秀なエージェントであれば知ることができる程度の内容だったものが、ピースウォーカーでは仮にも作戦立案者であるコールドマンすら知ることのできない高度な秘匿性であった。

「ザ・ボスの亡命の真相」の扱いの矛盾も、年齢の矛盾とは異なりシリーズ上無視できない大きなポイントだろう。

【オプスは「正史」だと信じる】


ここまで色々語ってきたが、私自身オプスは好きだ。名作だと思う。シリーズの矛盾をどの程度で許容できるかも個々人によるだろう。私も上述の矛盾は気になるが、気持ち的にオプスは正史だと考えている。その方が面白いからだ。

核抑止をベースとした社会批評、ザ・ボスと向き合うビッグボスの心理ドラマとしてピースウォーカーは名作だが、サスペンスとしてはオプスに分があると思う。ピースウォーカーはミラーを始め、心強い仲間が多く、緊張感としてはやや弱い。

 

オプスは敵対するFOXの支配下にある「サンヒエロニモ半島」からの脱出が軸となる。孤立無援、信じられるのは戦友のみ。正史と比較しても上位に位置する緊張感だ。ジーン、カニンガム、オセロット、ゼロ、様々な思惑が交錯し、弾道メタルギアの標的が二転三転するサスペンスには引き込まれる。

特にビッグボスとの対立軸となるジーンのキャラクター性は素晴らしい。「自らへの忠義」を軸に兵士たちへの問いかけを同じ目線で行うビッグボス。恐怖を植え付け「使命」で兵士を縛り付けるジーン。相反する二つのカリスマの表現は見事だ。

ジーンを生み出した「相続者計画」については言及が限られ、真相が不明瞭な点は残念だが、ひょっとするとMGS2の「S3計画」(ソリッド・スネーク・シミュレーション)のたたき台のような計画だったのかも知れない。高度な演習により人間を「ザ・ボス」に塗り替える計画。

 

しかし、その成果たるジーンが離反したことにより計画は見直され「裏切ることはない」AIによる「ザ・ボス」の再誕が試行され「ピースウォーカー計画」へ繋がっていく。そう考えると、サーガの見方も広がる。一方で「高度な演習」の試みは後の世に引き継がれ、将来的に「ビッグシェル占拠事件」や「リキッド・オセロット誕生」に繋がったのかも知れない。

オプスが正史かどうかは解釈の分かれる点だが、確かなのはオプスが名作であるという事。マスターコレクションやリメイク等で再び日の目を浴びることを願ってやまない。