イコライザー(2014)
※ネタバレあり
【豊かな日常パート】
「アクション映画を付けたら、ヒューマンドラマが始まった!?」
と、思うほどに本作、ドラマの比重が大きい。アクションシーンはそこそこの量。
主人公、ロバートは表の顔はホームセンターの正社員。勤務態度は真面目で、新入りのパートにも気さくに対応し、職場のムードを取り持つ。休みの日には仲間内で野球をしたり、行きつけのバーでは悩める若者の相談に乗るなど、人情ある良い人物として描かれます。
職場の同僚ラルフィのには特に親切に対応。警備員試験合格という目標を持つ彼に親身に寄り添い、余暇の時間を割いて彼のトレーニングに付き合う。
そんな彼の友人が、街を牛耳るマフィアの思惑に巻き込まれ、傷つけられた時、彼の優しいまなざしは豹変。始末屋としてのもう一つの顔が現れる・・・
【日常パートの効果】
この手の映画の主人公は、ジェイソン・ボーンのように、「戦士として強力であっても、戦う以外の生き方が分からず、なし崩し的に闘争の渦中へ」というのが基本ですが、本作のロバートは違います。
彼は日常の描写の通り、コミュニケーション力が高く、社会にも十分に馴染めている。だから、好むわけではない争いごとを行う理由もない。
それでも、町の悪化する治安に巻き込まれ、友人が傷つくのを目の当たりにすれば、彼は黙ってはいられない。戦う力を持つ自覚があるからこそ、目を背けることは、彼の真面目な性格上できないのでしょう。
人情あるロバートの人物像が日常の描写を通して丁寧に描かれるからこそ目が離せません。戦いのパートに入っても、そんな彼の人物像は一貫しています。
戦いを好まないからこそ、手打ちとするための金を用意し、相手に手を引くよう選択肢を提示したり。現場に子供が乱入すれば、即座に戦闘の選択肢を回避したり。映画全体で戦いを好まない人物描写が一貫するからこそ、本作の戦闘描写の少なさが気になりません。
一方で少ない戦闘描写がとてもこだわって描かれるからこそ、戦闘のプロフェッショナルとしての彼の描写に説得力が生まれます。
【緊張感ある、高品質のアクション】
特にクライマックスの戦闘シーンは圧巻です。
「弘法筆を選ばず」
なんてことわざがありますが、それを地で行きます。
ホームセンターの商品を武器として活用する。それで銃器を満載した多数の兵を制圧するのですから痛快という他ありません。
このシーンの印象が強すぎるせいで、以降はありふれたホームセンターが処刑場の様に見えてしまうかも!?
この戦闘シーンで、ホームセンターの同僚ラルフィがしっかりとロバートをサポートする役回りを担うのも、堅実な作劇です。日常パートで描かれた彼の人情が、巡って戦闘の渦中にあるロバートを救う力となる。
また、クライマックスの戦闘シーンでアサルトライフルが登場しますが、「フルオート」ではなく「セミオート」でした。たいていのアクション映画では「フルオート」で豪快にぶっぱなし、残弾数の整合性がおかしくなるなんてことが多々ありますが、本作では戦闘のインパクトより、緊張感が重視される演出がなされます。
アクション映画を見るときは、「ドラマはもう良いから、早くアクション見せてよ!」とか思ってしまうことが多いですが、本作の丁寧なドラマにはしっかり引き込まれ、それがあるからこそアクションの重厚さも増したように思われます。
こだわりの行き届いた、高品質のアクション映画と言えます。
