※ネタバレなし。

マンダロリアン(シーズン1)(2019)

【マンダロリアンとは】


マンダロリアンとは、教義での繋がりを持ち銀河を駆ける「戦闘民族」。本作はそんなマンダロリアンの一人とグローグーと呼ばれる「特別な力を持つ子供」を中心に描かれる物語。あらすじとしては「賞金稼ぎ」の仕事でグローグーの身柄を確保したマンダロリアン=マンドーが、ギルドの掟に抗い、グローグーを救うことに始まる「逃亡劇」。

スターウォーズ史上初の連続ドラマシリーズということもあり、本作は長尺が特徴。それを活かして描かれるのは「生活感」と「広大な世界観」だ。

【宇宙に息づく「生活感」】


惑星間の宇宙船による移動。合間の船内における、マンドーとグローグーの軽妙で心温まる掛け合い。負傷したマンドーが自ら傷を癒す過程。広大な砂漠を移動する中、画面いっぱいに広がる雄大な自然美。仕事で得た報酬を元に徐々にアップグレードされていく装備。2時間の映画、特に昨今の主流となる大量のキャラクターを群像的にさばく作風とは異なる、「一人の戦士」の「戦い」と「生活感」の双方を長尺で描く作風は、旧来の映画に見られる「没入感」を再生させる。

強敵との戦いにまつわるスリルはありつつも、そもそもマンドーは寄る辺のない「賞金稼ぎ」。限られる報酬、命がけの闘いの日々の中、生活をどうにか回すことが急務であり、船の損害一つとっても重大な問題となる。船の部品を守るため命を懸けることもある。映画シリーズのEP1~EP9から成る「スカイウォーカーサーガ」的な宇宙の命運を左右する戦いよりも、生活のために注力するマンドーの姿の方が、どこか身近に感じられる。

そして、焦点が絞られるからこそマンドーとグローグーの絆にも説得力が増す。元々は仕事としてグローグーの身柄を確保したマンドーだが、戦いの中、形としてグローグーを命がけで庇ったマンドーの負傷する姿を見やり、今度はグローグーがフォースを用い、マンドーを救う。それをきっかけにマンドーもギルドに抗ってもグローグーを救う決意を固める。古典的ではあるものの、確かに段階を踏む描写の説得力が、本作のドラマを硬質なものとする。

【「世界観」に宿る活力】


「スカイウォーカーサーガ」では反乱軍と帝国軍の戦いが中心となるが故、焦点の当たりにくかった「どちらにも属さない人々」が中心となる点も斬新だった。主役のマンドーは「賞金稼ぎ」。大義はない、金銭価値と「マンダロリアン」の教義のみを信じる。ストイックな人間性だからこそグローグーや、旅の先で出会う弱者へ向ける優しさが際立つ。

『ジェダイの帰還』にて帝国が壊滅したのちも、支配構造崩壊にまつわる混乱から、利益目的に労働者から更に搾取せんとする経営層や集落ごとの争いなど様々な問題が噴出する世界観は「善悪の二元論」に留まらない、現代社会の複雑性を反映するようで興味深い。

日本的な「時代劇」のエッセンスを取り入れている点が良く指摘される「スカイウォーカーサーガ」。一方の本作は、そのデザイン性を継承しつつも、アメリカ的な「格差」の描写も際立っている。マンダロリアンを始めとする「賞金稼ぎ」達は金銭的余裕のなさからジャンク品をかき集めたような武骨なデザインの装備を頼りに命を張る。一方帝国軍など金銭的余裕のある集団は流線型の洗練された装備に身を包む。「技術水準」が高くなっても、それが均等に「配分」されるとは限らないという現代アメリカの世相がデザインや世界観に息づく。

【「スターウォーズ」のポテンシャル】

面白かったのは、序盤ベスカー鋼で造られた新たなアーマーを身にまとう点。距離を取っての射撃程度なら無傷で受けられるベスカー・アーマーを根拠にこの手の西部劇でありがちな「主役にだけ銃撃が当たらない」という不自然さを解消している。基本映画やドラマでは流されがちな点だが、作品の設定に沿って「銃撃を受けても平気な装備だから」と説明を与える点が新鮮だった。しかも、ベスカー・アーマーの価値がグローグーに並び、マンドーが襲撃される理由になっている点も巧妙だ。

弱者にやさしく、一方で卑怯者には容赦のない制裁を加えるマンドーのキャラクター性も素晴らしい。昨今のハリウッド大作は「ヒーロー映画」が中心であるが故、マンドーのようなアウトロー的価値観を持つ存在が、大予算の世界観で躍動する様は新鮮で惹きつけられる。マンドーを取り巻くギルドのリーダー、グリーフ・カルガそして元反乱軍のキャラ・デューン等、善悪で割り切れないグレーゾーンを生きる者たちも、それぞれの信念がしっかりと描写される。

法律や社会正義の観点から客観的に見れば危うい存在がマンドーだが、直接彼に関わった人間はマンドーの誠実さを知っている。だからこそ、序盤で生まれた縁が後の展開へ繋がっていく様には万感の想いがこみ上げる。

「スターウォーズ」の広大な世界観のポテンシャルを活かし、現代社会の時代性までも描くのが本作だ。

ディズニープラス限定配信ということもあり見る方法の限られる本作だが、Blu-rayの発売もあるため、劇場版公開を機により多くの人に見て頂きたい。