※ネタバレあり。

【あらすじ:「エンドゲーム」の先】

久しぶりに「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」を見た。

スティーブ・ロジャースが去り、アベンジャーズも解散した先、世界は再び混乱に見舞われる。サノスの仕掛けたデシメーションから、救命された多数の人類。突如として急増した人口を受け入れる余地は社会には無く、大勢が難民として「難民キャンプ」での生活を余儀なくされる。

しかし、「難民キャンプ」での生活は容易なものではなかった。劣悪な環境下で蔓延する感染症、世界からの支援物資も「世界再定住委員会(GRC)」に中抜きされる。不遇な扱いを受け同志を募るカーリー・モーゲンソウ。彼女は闇の売人「パワーブローカー」から「超人血清」の複製品を入手し、強靭な身体能力を手にテロ組織「フラッグ・スマッシャーズ」を結成し破壊活動を始める。

スティーブの使命を受け継ぎ、事態の収拾に赴くサム・ウィルソンとバッキー・バーンズ。人種への偏見から、社会から不遇の扱いを受けるサムは、難民として厳しい立場に置かれるカーリーの苦悩に理解を示し、話し合いでの解決を模索する。

 

しかし、アメリカ政府により擁立された新たなるキャプテン・アメリカであるジョン・ウォーカーは戦闘行為での解決を主張。かつて「アベンジャーズの内乱」を画策したバロン・ジモ、裏社会での地位を確立したシャロン・カーターも巻き込み、事態は混沌の様相を呈する。

「フラッグ・スマッシャーズ」を巡る事件の行方は、そして、キャプテン・アメリカの称号を継承するのは誰なのか・・・。

【世界観:現代の風刺】

何よりも、世界観の臨場感に圧倒される。「エンドゲーム」の闘いを経て、世界に多数の人口が一気に流入。急変する情勢に対応する余力は、復興の渦中にある世界にはなかった。結果として社会から弾かれてしまった人々は、難民として苦しい生活を余儀なくされる。

現代においても、コロナ禍の「パンデミック」を経て、社会構造は大きな変革を迫られ、いまだに多くの人々が社会との繋がりが不安定となる苦しみに置かれている。そして、そのような人々に公共の福祉が満足に行き届かない現実がある。

その様な社会課題を、本作は巧みに風刺しつつ、MCUの世界観へ織り込んでいる。自然に取り込まれた現実の社会情勢は、ドラマに迫真の臨場感をもたらす。これまでの「キャプテン・アメリカシリーズ」の作風の強みを、本作もまた継承するのだ。

【決着:「力」と「肩書」と「使命」】

本作の立場上のヴィランとなるカーリー。彼女は分かりやすい悪役ではなく「普通の人」として描かれる。バッキーも、初対面で彼女を「人質とされた民間人」と誤解するほどだ。

カーリーは明確な悪ではない。難民として公的機関から粗雑な扱いを受け、果てに親族が感染症で命を落とす。自分たちの助けとなるはずの社会からの支援物資も「世界再定住委員会(GRC)」に中抜きされてしまう。社会の構造的な問題が、カーリーを追い詰め、結果として彼女は破壊行為で社会に問う他なくなったのだ。

逃亡中の「フラッグ・スマッシャーズ」が市民から通報を受けずに支援を受ける場面も興味深い。困窮する市民や難民への支援が不十分という現状から、もはや市民から国際社会への信頼はほぼない。市民からの「フラッグ・スマッシャーズ」への支援の場面はその象徴だ。

単純な悪ではなく、社会構造の問題点を論じてきた「キャプテン・アメリカシリーズ」。9.11後の監視社会のリスクを描いた『ウィンター・ソルジャー』。他国での救命活動の是非を問う『シビル・ウォー』。シリーズ過去作の作風をカーリーは担う。

それを知るがゆえに、サムもまた、カーリーの説得を諦めず、彼女を救おうとする。

血清を用い「キャプテン・アメリカの力」を行使するカーリー。政府公認で「キャプテン・アメリカの肩書」を背負うジョン。スティーブから「キャプテン・アメリカの使命」を継承したサム。事態は三つ巴の果てに決着を迎える。

「力」があるからキャプテン・アメリカなのか。「肩書」がキャプテン・アメリカの証明なのか。いや違う、「使命」こそが、キャプテン・アメリカの本質だ。

戦いの果て「他者を理解」して、「犠牲を最小限」とするという「使命」を全うするサムが、最後に「キャプテン・アメリカ」の名を継ぐことは必然なのだ。