※ネタバレあり。
久しぶりに『異次元の狙撃手』を見た。
米軍トップクラスの狙撃手ティモシー・ハンターはその功績を妬む上官たちの陰謀により冤罪を着せられ、軍を不名誉除隊させられる。そのスキャンダルの追及による心労や病気により、彼の妻と娘も次々と亡くなってしまう。
その後、日本を訪れていた彼の上官や追求した記者などが次々に狙撃で命を奪われる。警察はティモシー・ハンターを最重要容疑者として追跡し、FBIとの共同捜査網を展開する。江戸川コナン、世良真純も捜査に加わるものの、容疑者のはずのティモシー・ハンターまでも狙撃により遺体で発見されたことから捜査は暗礁に乗り上げる・・・。
軍人のスキャンダルと上層部の陰謀、そして帰還兵の心労と受難という普段のコナンとは一線を画すハードなテーマを掲げつつも軍事サスペンスとして作り込まれた脚本に引き込まれる。正直、あらすじや関連人物を見るとアメリカを舞台とするような話では?と思ってしまいそうになるが、コナンと事件の間に日本とアメリカを股にかけ活動するFBIの面々が橋渡し役として関わることでハードな物語がしっかりとコナンの世界に落とし込まれる。
本作限りの登場人物や設定が作り込まれるからこそコナンに詳しくない人にも一本の上質なサスペンス映画としてお勧めできる。
そもそも、原作含めFBIが「黒の組織」とは無関係な事件に関わる機会は貴重だ。今回はジョディ、キャメル、ジェイムズが直接的にコナンをフォロー。普段の警察の面々とはまた一味異なる頼りがいを発揮してくれる。身を挺してコナンを庇うキャメル、犯人と正面から渡り合うジョディ、冷静に指揮を執るジェイムズ。焦点の当たるキャラで毎回異なる作風を展開することこそ、コナン映画の強みであると再確認できる。
トリックも作り込まれている。地下駐車場から車を運転して地上に出ようとする被害者を犯人の狙撃が狙う。地上に出る道は幅が限られるため犯人から狙いやすいうえ、高低差があるからこそ狙撃時の弾丸の入射角にずれが生じ、犯行時の狙撃ポイントをごまかすことができる。
そして犯人が毎回犯行現場に残すメッセージは二次元の地図上では読み解けず、狙撃手として高さを考慮し、三次元的に解釈することで初めて解読できる仕組み。これにより追跡する警察を欺きつつ、ターゲットの狙撃関係者のみを誘い込めるという犯人の巧妙な罠として成立している。「狙撃」がテーマの映画だからこそのアイデアが綿密に織り込まれ、最後まで引き込まれる高密度のサスペンスだ。
設定の工夫は最終盤まで行われる。犯人の使う暗視ゴーグルが旧式であることを見抜いたコナンは、渦中の少年探偵団に明かりを犯人に向けることで窮地を脱するように伝える。旧式の暗視ゴーグルは微弱な光を増幅することで暗闇の中の視界を確保する。つまり、ふいに明かりを受ければ、それが過剰に増幅され、視界を遮られてしまう。
アクション要素の強まる最終盤においても、知略を活かして立ち向かう姿勢が貫かれている点はコナン映画として嬉しいポイントだ。
そして、映画公開時点では「消息不明」とされていた赤井秀一の存在も見逃せないポイントだ。窮地に陥るジョディへ記憶の彼方から助言だけでなく、ティモシー・ハンターからの狙撃手としての高い評価、「謎の男」沖矢昴との関係性へのヒントとなる描写も散りばめられる。直接的な出番は限られたが、映画初登場となる赤井の存在感もしっかりと示されていた。ファンとして納得の描写である。
FBIの面々が関わる映画としては後続の『純黒の悪夢』『緋色の弾丸』『黒鉄の魚影』等々、インパクトの強い作品も多く、本作は若干、埋もれがちな風ではあるが、綿密な設定と硬派な作風に魅せられる。未見の方には是非おすすめの、従来のコナン映画と異なる「異次元」の魅力の光る一作だ。
