※ネタバレなし

1.
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)

MCU史上最難関作品。ヒーローによる救命活動の結果生じる犠牲にどのように向き合うか。アベンジャーズのそれぞれの選択を通して彼らの信念が浮き彫りとなる。

 

スティーブとトニー、「行動する正義」と「自粛する正義」のそれぞれの主張を、会話ベースで描く前半。爆破事件に対するそれぞれの行動を通して信念を浮き彫りにする後半。複雑なテーマを描きつつも、メリハリある構成とサスペンス要素で視聴者を引き込む手腕に圧倒される。

社会的ルールを遵守することなしに、救命活動の継続は叶わないというトニーの信念。一方で、今危機にさらされる遠方の人々の救命を諦めるわけにはいかないというスティーブの信念。相反する心情を本作は丹念に拾い上げる。

難点としては視聴ハードルが高すぎること。双方の主張を理解するには過去の複数作の視聴が前提となる。その上でも本作を読み解くのは容易ではない。台詞での描写、演技や視線による心情の演出、映画的技法をフル活用し二時間半に押し込まれた情報量はあまりに膨大。一回や二回の視聴で全貌の理解は難しい。その密度は集大成たる『エンドゲーム』さえ凌駕するが、見るたびに新たな発見のある傑作群像劇だ。

2.
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)

『キャプテン・アメリカ』シリーズ第二弾。シールドの崩壊と冤罪を着せられたスティーブ達の奮闘が描かれる。逃亡劇として緊張感を維持しつつ、船上におけるスタイリッシュな身のこなしや、エレベーターにおける力強い大暴れなど多彩なアクションで観客を引き込む。

予備知識は前作『ファースト・アベンジャー』のみで済む点からも視聴ハードルは低い。本作に関しては関連作と言うよりは、近代史や社会問題の知識があれば更に味わい深い。高度な情報化に伴うリスクへの警鐘を、近代史を絡めつつシナリオに落とし込む。それは説教的な描写ではなく、臨場感を伴うスリルとして作品の没入感を底上げするものだ。

ほとんど難点の挙げようがないが、ホークアイの所在はさらっとでも触れてほしかった。描写の取捨選択の結果としても、シールド崩壊に際して彼の動向が示されないのは違和感だ。

3.
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)

両親の喪失のトラウマを克服するため、ヒーローとして秩序の回復に尽力するブルース。しかし、闇に踏み込むほど、明かされる事実がブルース自身を蝕む。お馴染みのあらすじだが、過去作と異なり昼と夜の顔を使い分ける器用なふるまいは本作のブルースにはない。

 

作中で一貫して闇と向き合うブルースの鬱屈した心情を正面から表現するロバート・パティンソンの演技には強く引き込まれる。ブルースの心情を反映するかのような荒廃したゴッサムの描写。絵画のようにこだわり抜かれた映像美はシリーズ最高峰だ。

難点としてはクライマックスで空気感が一転する点だ。地道な刑事ドラマとして描かれてきた部分に魅せられてきた手前、いきなりスペクタクルを展開されても戸惑う。総合的な完成度を思えば些細なポイントだが。

4.
『LOGAN/ローガン』(2017)

『ウルヴァリン』シリーズ最終作。差別問題というテーマに対して『X-MEN』シリーズが「直接的な対立」を描くのに対し、本作は「間接的な孤立」を描く。

 

社会リソースの枯渇に際し、真っ先に福祉から切り離されてしまうのはマイノリティであるという社会問題に切り込む。現代にも通じる社会構造の問題を前に、仲間のため、命の限り戦うローガンの勇姿は悲壮であり、どこまでも力強い。

静かなる世界の終末を、寂寥感を持って描く本作の作風は異色でありつつも味わい深い。過去作を予習した方が理解や思い入れも深まるが、本作単体で見ても、普遍的な「命の終わりにどう向き合うか」というテーマは十分に伝わるはず。

難点としてはミュータントの衰退の理由はもっと序盤で明かしてほしかった。物語の本筋でないことは承知だが、気になるポイントではあるのでローガンの物語に集中できるよう、疑問点は序盤で消化させてくれた方がありがたかった。

5.
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)

ならず者たちの結束と宇宙を舞台とした活劇がポップな作風で描かれる。『ダークナイト』以降、アメコミ映画はどれだけリアルに寄せられるかが一つの評価軸となったが、本作は時代に逆行する形で独自のスタイルを確立する。映画が作り物であることを自覚してどこまで「盛り上げられるか」の挑戦だ。

 

特殊メイクされたキャストとフルCGキャラ。別々のスタイルの個性的なキャラを満載したうえ、巧妙なセットや懐かしの楽曲等々、「映画としてこだわれるポイント」全てを綿密に構成した贅沢な一作。

予備知識なしで単体で気楽に見れる作品だが、満足度は非常に高い。出自の異なるメンバーが仲間割れしつつもチームとなっていく王道プロット。「リアルな作風」ではないが「リアルな感情」が宿るから引き込まれる。エンタメとしての物量に圧倒されること間違いなしだ。

6.
『デッドプール2』(2018)

不死身のおしゃべりヒーローデッドプールの活躍を描く第二弾。基本的にコメディテイストだが、本作は傷ついた少年との交流を描くことでテーマ性を付与する。

 

法の抜け穴をくぐることで、捕まらずに少年を傷つけた卑劣な敵を前にデッドプールは正義を成す。「ルールで裁けない悪」を打倒するのは「ルールに縛られない」デッドプール。アウトローなはずのデッドプールがヒーローである理由がこの一作に詰まっている。

そして、そんなデッドプールだからこそ彼の周りに仲間が集まる。個性的な仲間との時に微笑ましく、時に凄惨な交流に目が離せない。笑いと感動、そして壮絶なアクションで満たされた作品。

「ルールに縛られない」デッドプールの強みが描かれるが、「ルールを順守する」必要性もコロッサスを通して描かれるバランス感覚も見事。予備知識も必須ではなく(あった方が笑えるネタもあるが)、初心者にも薦めたい傑作。しかし残念なことに本作、年齢制限付きである。

7.
『スーパーマン』(2025)

複雑さを極めた現代において、まっすぐに正義を志向することがどのような反応を持って迎えられるか。本作は正面から描く。ジェームズ・ガン監督の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でも発揮されたリアルな心理描写は本作で一層の磨きがかかる。

 

必見なのはスーパーマンの対立軸たるレックスだ。彼のスーパーマン打倒の動機は「映画の悪役」としては意外なものだが、「現代の人間」としては迫真のリアリティを持つ。

アクションも必見だ。CGを活かして力強く敵を打倒するアクションはありふれているが、CG活用で豪快にスーパーマンがぶっ飛ばされる描写は新鮮だ。スーパーマンの敗北を真正面から描くからこそ、再び立ち上がる彼の勇姿に引き込まれる。

8.
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)

トム・ホランド主演、ホームシリーズ第二弾。ピーター達のヨーロッパ旅行を描き、少年としての青春、大人としての使命に板挟みとなる葛藤が描かれる。

 

導入部からオチに至るまでネタバレ厳禁の内容だが、高度に情報化された現代で真実が見えにくくなるリスクというテーマが作品を通して巧妙に織り込まれる。

現代の警鐘となる社会派サスペンスとして、瑞々しい青春モノとして高い密度を誇る。終盤のヴィランの主張は現代を生きる我々にこそ突き刺さる。本作については特にネタバレなしで見てほしい。トム・ホランドのシリーズでは一番好きだ。

9.
『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014)

殲滅ロボ、センチネルの襲来により窮地に立たされるミュータント。対抗策となるのはウルヴァリンのタイムトラベル。新旧キャストの共演と歴史を揺るがすタイムリミット・サスペンス。

 

華やかな要素に目が行きがちだが、センチネルの背負うテーマが興味深い。センチネルは「工業化」のメタファーだ。ミュータントが象徴する、社会から排斥されるマイノリティは、如何に自らの個性を活かすかが重要だが、過剰な「工業化」はそのような人々の行き場を奪ってしまう。

生成AIの登場でクリエイティブな職の意義が問われる今、本作のセンチネルの描写の意味合いが公開当時とは異なって見える。今、最も再評価が待望される作品だ。

10.
『エターナルズ』(2021)

長命の超常種族という独自の視点、立場からの救命を描く。人間をディヴィアンツという物理的脅威から守るにとどまらず、技術供与という形でも長きに渡り文明の発展に寄与するという描写はヒーローものとして異色ながら興味深い。

 

過度な文明干渉に慎重になる心理、人との距離感をどのように保つかの葛藤。時代や空間を超えていく壮大な映像美にも引き込まれる。

しかし、物語を最も強く牽引するのは、素直に表現されるエターナルズの感情だ。友の幸せを願い、友の喪失を嘆く。立場の違い、方法の違いがあれど、仲間を想う気持ちで共通するエターナルズは紛れもないヒーローだ。

難解な印象を受ける本作だが、宇宙の救済を模索する「マクロ視点」と、仲間を想う「ミクロ視点」がメリハリを持って描写されるため、視聴すればすぐ引き込まれるだろう。