※ネタバレなし
スパイ映画とはロマンだ。
孤独の運命を決定付けられ、それでも、愚直に難解な任務に挑む。成功に名声は伴わず、失敗すれば命はない。ハイリスク、ローリターンなミッションを前に、うちに湧き上がるプロフェッショナリズムだけが頼りだ。
そのような、スパイ映画の往年の名作群のエッセンスをいかんなく取り込み、現代的に昇華させたのが本作だ。
007のような、胸躍る「ガジェット」の数々。トム・クランシーシリーズを思わせる国家間パワーバランスを揺るがす「政治サスペンス」。ミッション・インポッシブル的な「チームワーク」。ジェイソン・ボーン的な「実戦的格闘アクション」。24 -twenty four-的な「臨場感あるストーリーテリング」。
名作群の良いとこどりでありながら、破綻なくまとめ上げる手法に引き込まれる。
シーズン間の橋渡しも巧妙だ。シーズン1でエージェント達の性格と抱える孤独を描きつつ、シーズン2のマイノリティを象徴する「インヒューマンズ」の物語に接続する。エージェントの孤独とインヒューマンズの孤独が共鳴し、プロフェッショナリズムをまとうエージェント達の内面が描かれていく。シーズン2の「インヒューマンズ」の登場は単なるテコ入れではない。ドラマを掘り下げるための物語上の必然なのだ。
また、本作はMCUの一作品でもある。アベンジャーズを始め超人の闘いの余波にどう向き合うか。それらが副次的にもたらす厄災にコールソン達エージェントが、あくまで等身大の「人間」として立ち向かう姿は「ロマン」としか言いようがないだろう。
MCUを客観視する。MCUの世界を時間をかけてじっくり歩く。
普段、車で通り道を、歩いて進むような新鮮な発見と驚きがある。
単体として優れたドラマである一方で、MCUとの結びつきは、このドラマならではの味わいも生む。
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)とのクロスオーバーエピソードが特に有名だが、個人的には『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)とのクロスオーバーに膝を打った。作中の「あの要素」が、あのように関わるとは。
適度に現実的で、適度に非現実的。スパイ映画とヒーロー映画の境界線上に本作はある。この絶妙な匙加減が「緊張感」と「高揚感」を両立させるのだ。
MCUに詳しくなくとも、スパイ映画にロマンを感じる方には是非、視聴頂きたい一作だ。
