ファイナルファンタジー零式(2011)
FINAL FANTASY 零式(FF零式)
※ネタバレあり
【ファンタジーの強み】

ファイナルファンタジーシリーズの強みは、魔法というギミックを用いることで、ダイナミックな設定で物語を語れることだと思います。
FF13はルシとファルシの設定で階級社会の風刺を行いました。FF7はライフストリームにより生命の循環を表現し、技術革新の暴走への警鐘を行いました。本作FF零式はファンタジーでありながら「戦争」を題材とします。
FF零式にとっての最重要設定。それは、キャラクターが死を迎えると、残された者達の記憶から「犠牲者との想い出までも消える」ということでした・・・
【戦争を未然に防ぐ動機とは】

FF零式はオリエンスという世界を舞台に朱雀、白虎、玄武、蒼龍の四国が武力により領土争いが行われます。四国はそれぞれが一つずつ「クリスタル」という強大な動力源を有し、それぞれの国の兵はクリスタルの力の一部を授かることで「魔法」を使用できるようになる。
主人公は朱雀領に属するクラスゼロの14人の生徒。朱雀量の「クリスタル」の防衛を行いつつ、他国との争いに駆り出されます。
そして「クリスタル」の力の加護を受けることと引き換えに、上述した通り「犠牲者との想い出」を奪われることとなります。
この設定が意味するものは何か。
人類は、その長い歴史の中で「戦争」という誤った手段を選ぶことが幾度となくありました。しかしその後、自らの過ちを理解し「戦争」という手段を否定し、行いを改めることも繰り返してきました。
人類に戦争という手段を過ちと気付かせる最大のもの、それこそが「犠牲者との想い出」です。
「犠牲者との想い出」があるからこそ自分たちが失ったものの大きさに気付くことができる。そして、それゆえに戦争という手段が誤りだったと認識できる。それこそが次の戦争を未然に防ぐ動機となる。
だからこそ、人は次の世代に戦争の過ちを「伝える」必要がある。それは歴史上に文章として記される記録であることもあれば、当事者の心に刻まれた喪失の痛みであることもある。
【語り伝える重要さ】

本作における「クリスタル」はそのような人の営みに干渉します。生存者から「犠牲者との想い出」を魔力により奪い去る。
生存者は次の戦いを踏みとどまるきっかけを失い、終わりなき戦いの輪廻へと駆り出されてしまう。
人を魔力に依存させ、戦いを繰り返させることで、永遠に渡り、自らを守らせる。それこそが本作における「クリスタル」の悪意です。
ファンタジーという設定を活かした、逆説的に「戦争の痛みを語り伝える重要さ」と反戦のメッセージを描写するシナリオこそ本作の本質です。
【マキナの選択】

「クリスタル」の思惑により、次第に戦いへの疑問を奪われていくクラスゼロの戦士たち。その中で特に争いに懐疑的だった者、それがマキナでした。
マキナは病弱な幼馴染、レムを守り切ることを何よりの願いとして生きてきました。身近な人間の喪失の恐怖に誰よりもさらされてきた彼だからこそ戦闘の選択肢には懐疑的でした。その姿勢から、クラスの足並みを乱すことも多い。
しかし、本作のラストにおいて、そんな彼の選択こそが、永劫に続くかに思われた戦いの輪廻を終わらせるものであることが明らかとなります。
戦いと選択の果て、本作のラストで一つの「奇跡」が起きます。それはご都合的なものではなく、とても素朴なものです。
数多くの問題は、いまだに残り続け、世界から全ての争いの芽を摘むことは難しい。それでも「クリスタル」の加護が失われたことで、一つだけ確かなことがある。
「この世界は、二度と犠牲者との想い出を忘れない。」
マキナとレムが生きる、これからの世界は
果たして平和を実現できるのか。
結末はプレイヤーの想像力にゆだねられます。





