ゆうがのブログ

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世の中辛いよね。なんで辛いのかその理由がわかれは少しは、楽になるかも。そんなブログです。
信じるか信じないかは、あなた次第です!

「これは、烈馬から預かったものだ。……もし私に何かあれば、あの子へ届けてほしい」

ミゲルは、蝋燭の火の揺らぐ密室で、そっと小箱を草の一人に託した。
そこには一通の手紙が封じられている。封蝋には、日本の古い印が押されていた。

烈馬が“死ぬ前”、密かに彼に手渡した手紙──
「俺がこの世界から消えたら、息子に読ませてやってくれ」

ミゲルはそれを、誰よりも重く受け止めていた。

「お前の息子が、何を選ぶかはわからない。だが……継ぐ覚悟を持った者には、それだけの言葉が必要だろう」

ロンドンでは、霞が新聞社の重厚な扉をくぐっていた。
貴族社会に密着した報道を続けるこの場所に、彼女は記者として正式に迎え入れられたのだ。

「君の働きには感服している。今回の“粛清”報道、我が社の信頼に値する」

社長の賛辞に、霞は礼を述べるだけだった。
その笑みに迷いはなかったが、その背には言葉にならぬ重圧があった。

机に戻り、霞は静かに書き始める。
それは記事ではない。誰にも渡さぬ“記録”であり、“証”だった。

黄昏の光が差す中国奥地の農村。
竹林の揺れる音の中、一人の青年が手紙を受け取っていた。

エリオ──烈馬の息子。
東洋の片隅で、誰にも知られず育てられてきたその若者は、
箱を手に震えていた。

蝋封を解き、手紙を開く。
紙の匂いに、どこか懐かしい、なつかしい父の影が宿っていた。

「エリオ。お前がこれを読んでいるということは、私はもうこの世にいないだろう。
だが、私たちの戦いは終わらない。
草は地を這い、火を抱き、世に知られずして道を繋ぐ。

お前に託す。
ミゲルのもとへ行け。彼は信じるに足る男だ。
我らの活動を、お前の中で紡ぎ続けてほしい──」

エリオは手紙を閉じ、深く息を吐いた。

風が、竹林を鳴らした。
その音は、まるでかつての誰かの足音のように響いていた。

物語は、ただの死で終わるものではない。
その静寂の先に、また次の息吹が生まれようとしていた。


▶『裏天正記』ヨーロッパ編 第14話「契りの火、継がれし名」をカクヨムで読む。

📖考察:「契りの火、継がれし名」──語られぬ誓いと、継がれる静かな意志

1. 🔥手紙に託された“継承”の物語

この章で語られるのは、戦いや陰謀ではなく、「受け継ぐ」という静かな行為です。
烈馬は死んだ──という世界の事実が動く一方で、その死の裏に残された「手紙」は、
次の世代を導く“光”のような存在となっています。

  • 烈馬の遺志は言葉となり、時間と距離を超えて息子に届く

  • その媒介となるのが、信頼したミゲルと草の仲間

  • 草の戦いは、剣ではなく「語り」によって継がれる

ここでは、「死」の絶望を見せながら、「継承」という希望の種が静かに蒔かれているのです。


2. 🖋霞の孤独な二重生活

霞のパートは、草としての潜伏の厳しさを象徴しています。

  • 社長からの評価=成功ではなく、より深い監視と責務の始まり

  • 彼女の手は情報を記すが、真実は誰にも見せられない

  • “語られない記録”こそが、草の本質

霞は一人の記者として、そして一人の“草”として、
真実を記しながらも、その全てを世界に見せることはない。
その姿は、烈馬とは異なる形での“戦い”の在り方を示しています。


3. 🌿次なる主人公への布石──エリオの目覚め

エリオの登場により、物語は“世代交代”の兆しを見せ始めます。

  • 烈馬の子でありながら、これまで一切関わらなかった青年

  • 手紙という“声”によって、父と繋がる

  • そして、「ミゲルのもとへ行け」という指令が、新たな動きの始まりを告げる

エリオという存在は、ヨーロッパ編の“終わり”を静かに示しつつ、
同時に幕末編や第二世代の物語へと繋がる“芽”として描かれています。