若頭の代理で上京した桑原は連れと関西弁ではなしていたが、その連れも先に帰り、一人で飲んでいた。
桑原の前にスコッチのロックが置かれた。
「わし、頼んでないで」
「オーナーからです」
「ほぉ、そうかいな。ありがとさん。オーナーさんはどこにいはりますんや?」
「向こうのカウンターの一番端におります」
「なんや、えらい若ぉて、キレイな兄ちゃんやないかい」
とバーテンに言うと、桑原はオーナーの隣に座り、気持ちほど頭を下げ、グイと飲んだ。
「すんません。いただきますわ」
「俺も関西だから、あんたの関西弁なつかしくてね」
「ほぉ、あんたも関西出身ですかぁ?えらいもんですなぁ、東京で店もって」
「まぁ……ね、お仕事でこちらへ?」とその美しい男は桑原に聞いた。
バーボンを生のまま、グラスで飲んでいる。
桑原はチャコールグレーのスーツ。髪はオールバック、縁なしの眼鏡、
ライトブルーのクレリックシャツに紺のドットタイ。
服装だけなら、すかした堅気の勤め人で通るだろうが、左の眉からこめかみまで切れた傷跡と
どこかなけやりな身ごなし、ときおり見せる射すくめるような眼差しに隠し切れないプロの匂いがある。
「ええ、まあ。出張ですねん。わし、東京はどうも合いませんわ」
「住めば都ですよ」と男はドボドボとジャックダニエルのプラチナをグラスについだ。
「よぉ、飲みはりますなぁ」と桑原は感心したように言った。
「社長。そろそろ、お帰りにならないと」スーツをピシッと着た背の高いガッチリとした男が近づいて言った。
「まだ、飲む。斉藤、お前もここに座って飲め」
桑原はその大柄の男を値踏みするようにジロジロと見た。
「あんた、警官あがりのボディガードでっか?」と斉藤に聞いた。
「まぁ、そんなとこだ」と斉藤といわれた大男が言った。
「ほんまなら、女のおるとこがええんですが、東京弁の女はわし、あきませんねん。ここ、エエ店ですな。」と桑原はべんちゃらを言った。
「東京にも関西弁の女いますよ。紹介しましょうか?」と社長と呼ばれた男が言った。
「いや、そろそろホテルに帰りますわ。明日、仕事があるんですわ。どうも、ご馳走になりました」と桑原は言い、
金を払って店を出ていった。
「社長、あれ、誰ですか?」と斉藤が練に聞いた。
「二蝶会の若頭代理の桑原」
「見るからに極道って感じの男ですねぇ」
「大阪じゃ腕っぷしが強いので、有名らしい。あれで、結構頭も切れるって話だ。明日、会社に挨拶に来るぞ。」
「ほぉ。で、どうするんですか?」
「別にどうってことない。ここんとこ、関西の組から挨拶に来てる奴らと一緒だ」
「春日と二蝶は別に利害関係ありませんから、穏便に済ますってことですね」
「ああ。帰るぞ」練はそう言うとグラスのバーボンを飲み、席を立った。
翌日、イースト興行の社長室で練と会った桑原は唖然とした。
「あんたさん、昨日の店のオーナーさんやないですか。あの、春日の若頭でイースト興行の社長が、こんな優男さんなんや。昨日はご無礼いたしました」と頭を下げた。
「桑原さん、頭、上げてください。俺、この世界に入ったの遅いし、桑原さんみたいな筋金入りじゃないから」
「いや、今の極道はシノギが出来んことには話しになりませんのや。そら、春日の山内さんはきっちりシノギはる言うて関西の方でも有名でっせ。今後ともよろしゅうにお願いします」
「桑原さんもなかなかだって、聞いてますよ。俺が大阪に行ったときはよろしく」
「はい。その節はご案内しますがな」と桑原は言った。
春日の若頭が関西に来たら、それこそ本家の組長が出てきて、わしらなんかお呼びじゃないわい。男娼上がり言うことやけど、ほんまきれいな顔しとるわな。
ダークグレーのスーツに白いシャツ、レジメンタルのネクタイをした練はどこから見ても青年実業家という風情だった。桑原も服装だけ見ればそうだが、身のこなしや目つき、歩き方で堅気ではないと言うのがすぐにわかる。
「わざわざ、ご挨拶いただいて、すみません。融資の件は担当が後ほどご返事します」と練が言った。
「山内さん、よろしゅお願いします。わざわざ、わしが若頭の代わりに出張って頭さげてますのんや。無下に断ったら殺生でっせ」
「ええ、桑原さんとはこれからもお付き合いしたいと思ってるから、安心してください」
「そうでっか。ほんならまた、お会いしたいもんですなぁ。じゃ、失礼します」と軽く頭をさげ桑原は出て行った。
桑原が出て行くとすぐに斉藤が練に言った。「社長、いいんですか?」
「ああ、2、3億の金、関西方面にバラまいたからって、どうってことないだろ。あの桑原って奴は敵に回すと怖いらしいぜ!縛られて、逆さに吊るされて、痛めつけられるんだそうだ。なな、それより今日から花園神社祭りらしいな?夕方から行こうぜ」と言うと斉藤に抱きついた。
「わ、わか……」
練が斉藤と一緒にソファに倒れこみ、カチャカチャとベルトをはずし始める。
環が社長室に入ろうとして、2人の様子に気づき、ソッとドアを閉めてため息をついた。
あーーー、桑原が桑原が、ただのヘタレな極道になってしまった。
ただ単に、練と桑原が会話したらどんなんかなぁーと妄想して書いてみました。
全然、面白くないね。トホホ、お許しあれ。
喧嘩の国の王子こと桑原保彦は黒川博行の疫病神シリーズのキャラ。
只今、入れ込んでいるので登場させてみました。ゴロマキ(喧嘩)させたら、
極道一やと言う腕っ節の強さと後に引かないイケイケ、筋金入りの極道一直線が練とは対照的なキャラです。私、練とは違った意味で大好きなのです。今回は暴れない大人しめ桑原でした。
最初、練と桑原で殴り合いさせてたんですけど上手く書けなくて。。。汗。
そろそろ、エッチィのを書こう♪及練、なかなかはかどらないよー!