「本当にありがとうございます。あの・・・ぜひお礼をさせてください。」
女は言った。
「私、実はお店をやってるんです。その・・・男性向けのお店なんですけど・・・あなたさえよければぜひいらしてください。」
「別にお礼などしてくれなくてもいいし、そんな店に行かなくても女には困っていない・・・いや、むしろ求められすぎて困っているくらいだ」
「そうですか・・・ざんね・・・」
「が!!!お前さんの店がどんななのかは興味があるな・・・行ってみよう。」
Tはなぜか若干前かがみになりながら言った。
「本当ですか?ありがとうございます。うちの若いコにたくさんサービスさせますから。」
Tは女の言う「店」に導かれるままついていった。
町のはずれ、寂れた町並みには似つかわしくない豪華絢爛な外観と内装。
「お前さんは接客しないのかい?」
「私はオーナーなので・・・」
たしかにその女はのっぺらとした顔立ちで、手足も短く背中も丸く、決してスタイルが良いとは言えなかった。なにより、固そうな雰囲気が漂っていて、男に媚びるのを生業とするには向いてないような気がする。
「そのかわりお店の女の子全員でサービスしますから思う存分愉しんでくださいね。」
キャバレーのような、暗いムードとはかけ離れた明るい雰囲気。
何より既存の風俗と大きく違うのは料理の質だ。
ステージでは豊満な美女とスレンダーな美女が統制の取れた踊りを披露し、
それを見ながらTは食らい、飲み、さわり・・・王様気分を味わう。
そこへ、助けた女が近くに来て耳打ちする。
「お好みのコがいましたら別室もご用意しておりますので・・・」
「いや、さっきも言ったように俺は女には困ってないのでな・・・」
「そうですか・・・ざん・・・」
「が!!!これだけ上等なサービスを提供する店の、裸のサービスはどのようなものか、興味はある。」
Tは続ける。
「いや、興味っていうのは、店もキレイ、料理も美味しい、酒も美味い、どこかに悪いところがあるんじゃないかってね、そういう意地悪な意味での興味ってことでね・・・何人でもいいの??」
「どうぞ、お気の済むまでお楽しみください。」
「じゃあ、全員でお願いします!」
「はい?」
「いや、2、3人だけとかだったらたまたまいいコだけ選んでしまったり、その逆だったりする可能性もあるからね、それでお店の印象を決め付けてしまうのもよくないなって思ってね、決してヤリ溜めしておこうとかそういうわけじゃなくてね、だってほら、俺は女には困ってな・・・」
「どうぞ、お気の済むまでお楽しみください。」
女はため息をつきながら言った。
そして別室にて繰り広げられた酒池肉林の宴も終わり・・・
ハッスルしすぎて腰を痛めたのか、かなりの前屈姿勢でTは部屋を出てきた。
「ずいぶんと長居してしまったし、そろそろ失礼させてもらおうかな。」
「そうですか、本当に今日は、あ、もう昨日ですね。昨日はありがとうございました。」
楽しんでいる間に日が変わってしまったようだ。
女は封筒を取り出し、Tに手渡した。
「これ、持って行ってください。割引クーポンと手紙が入ってますので。」
「そうか、ありがたく頂戴するよ。」
女に見送られて店を出る。
太陽が高い。
それにしても昨日はハッスルしたな・・・童貞喪失が複数プレイなんて男はそうそういるまい・・・
Tは封筒を開け、中のものを取り出した。
女の言ってた通り、クーポン券だ。
「10%割引・・・ニューハーフ倶楽部・竜宮城」
「ニューハーフ・・・童貞喪失がニューハーフ・・・」
頭の中は真っ白になり、落胆で顔はどんより曇り、Tは前屈姿勢のままヨボヨボと老人のように帰路についた・・・
「真・浦島太郎」 完