Turn Out the Stars | Thousand Days

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さうざん-でいず【千日手】
1. 同一局面の繰り返し4回。先後入れ換えてやり直し。
2. 今時珍しく将棋に凝っている大学生の将棋系ブログ。
主に居飛車党過激派向けの序盤作戦を網羅している他、
雑学医学数学物理自転車チェス等とりとめのない話題も…


初めに天地を創造したとき (※とても暑かった)
地は (色々な素粒子がごった返す)混沌であって
(何者も直進できないため)闇が深淵の面にあり
(その三分で水素の約10%がヘリウムに変身した)

(数十万年後やっと電子が)水素の面を動き回り
「光あれ」と言った。こうして光があ (ちこち飛んでいけるようにな)った
…うん、オッケー☆

(その頃はもう邪魔な電子も皆原子に入っており)
光と闇がいい感じに分かれ
光を昼と呼び、闇を夜と呼んだ

夕べがあり、朝があって、一日。


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現代とは人類史上稀に見る素晴らしい時代らしく、
表面上は名を伏せているものの高校で普通に錬金術(Alchemy)の奥義を教えている。

金(Au)を作る分には少々コストが掛かりすぎるが、
本来それは天地開闢と星々と人とを繋ぐ力であり…
これから科学を学ぼうとする全ての者達のために、美しい物語を用意してくれてもいる。



【突っ込みどころ満載?のMade in China】


「周期表」といえば上図のようなものを想像するのが普通だし普通そうあるべきなのだが…
これはあくまで原子核の外側をうろつく電子の都合に合わせて並べられた表でしかない。

対して、原子核の中のひと(陽子中性子)の気持ちになって作られたのが下図である。
こいつらは電磁気力より遥かに強いお色気「色の力」でくっついており、実に仲良し。

ただ陽子の数が増えるにつれ陽子の持つプラス電荷同士の反発力が無視できなくなり、
(その名の通り電気的に中性である)中性子がより多目に間を取り持つ必要があるっぽい。

…原子番号が大きくなるにつれ、中性子の割合がちょっとずつ増えているのはそのため。




上図の1ブロックがそれぞれの元素を表している。
一見すると無数に種類があるようでも、
この世で永久に暮らす権利を確保している原子核は中央の僅かな?黒いブロックの部分のみ。

…それ以外の色つき元素は、いつの日か放射線を放ちながら死にゆく運命にある。
(※個々の寿命は完全にランダムだが、全体でみると半減期は何故かちゃんと守られている)

右上方の黄色い子は余分なお肉をα線(陽子2個+中性子2個)として放出する。
左上一帯の青い子は余分な中性子を陽子に変え
同時にβ線(超スピード電子)とニュートリノを放つ。

そして…エネルギー自体が有り余ったリッチな子はγ線(極限まで元気な光)を排泄してスッキリする。



【金じゃなくて鉛ならいっぱいできるのに】


陽子と中性子はそれぞれ2, 8, 20, 28, 50, 82個揃うと特に安定するという謎の性質を有し…
そうして最後のマジックナンバーである82番、鉛(Pb)より先に安住の地は(あんまり)ない。

原子核は種類ごとに質量がそれぞれ決まっている。
目減りした分の質量は E=mc^2 の変換公式に従い、
日本を温めたり地上を焼き尽くすのに用いられる。


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原子核があまりに小さすぎる上にどいつもこいつもプラスの電荷を帯びているお陰で、
原子核同士が直にぶつかって反応することはない。
(お色気色の力は超絶接近しないと働かない)

ただ例外的に核反応がポンポコ起こる場所が二つある。…世界の始まりの時と、星の中だ。

しかし前者において与えられた時間はたった3分…
いくら料理上手でもヘリウム作りで精一杯である。
(しかも、重い元素を作るときほど高温高圧の炉を必要とする仕様なのだからタチが悪い)

そこで、どこぞの偉い人重力が天の上の水を集めて「」なる超高性能核融合炉を作った。


強大な重力でもって原子を押し込め、反応が進んで重い元素ができるほど密度が高まり、
中央部の圧力釜して更に重い元素を作る準備が自然に整うという、まさに天才的な設計!

最初は水素をヘリウムに変えることから始まり、星の人生の大部分はそれに費やされる。

次にヘリウムを3つ重ねて炭素12を作るのだが…
途中で経由するベリリウム8が実に儚い命であり、
これが崩れるまでの一瞬で更にヘリウムがぶつからないと成立しない奇跡的反応なのだ!

しかし炭素以降の元素を生み出す方法は他になく、
今こうして炭素型生物が星空に思いを馳せているのだから多分上手くいったのだろう(笑)



【放出されるのは結合エネルギーの差額分】


そこさえ乗り越えればあとはそこにヘリウムを重ねていくだけ(※実際は面倒)なのだが…
原子番号26のエコノミックアトム、鉄(Fe)まで来ると最早エネルギーは全く得られない。

消し炭を更に燃やそうとするようなものであり、むしろ逆にエネルギーを吸い取られる。

すると今まで原子力エネルギーで支えてきた自重に耐えられなくなって星は内部崩壊し、
高速で中央部に突っ込むも既に行き場が埋まってのでその勢いで外に向かって弾け出す。


これが超新星爆発(IIa)であり、一瞬ながらも星ひとつで銀河クラスの明るさを発揮する。

最終段階にまで到達できるのは、太陽より遥かに質量の重い一部の選ばれし星だけで…
(例えばオリオン座のベテルギウスが今かなり変形していてもうすぐ爆発しそうな感じ)

…鉄より重い元素はみな、この僅かな時間の暴走の合間に作られた奇跡の産物なのだ。
また、爆散を通じて初めて、今までに作った重元素を次代の星に渡すことができる。。



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最初の世代の星は、わずかな重元素と燃え滓を遺して今はもうみな消えてしまった。
(望遠鏡で130億光年先を覗けば見えなくもないが)
太陽は数世代目で、最初から重元素が大量にある。

重力の弱い外側には軽いガスが集まって木星・土星・天王星・海王星などを作り、
重力の強い内側には重い岩石が集中して水星・金星・地球・月・火星が作られた。

液体の水とともに集められた炭素原子達は、無限に近い化学的自由度を存分に発揮し、
十億年かけて生命の基盤を作り、三十六億年かけて進化し…そうして今、ここにいる。


一方、世界の開始を告げた光は百三十七億年かけて旅するうち電波の域にまで減退し…
今ではテレビ番組終了後に流れる白黒のジャミングとして、僅かにその名残を止める。



※参考書籍:吉岡甲子郎「化学通論」(裳華房) など


[Day 1 or 4]