例えば君がいるだけで心が強くなれること | Thousand Days

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さうざん-でいず【千日手】
1. 同一局面の繰り返し4回。先後入れ換えてやり直し。
2. 今時珍しく将棋に凝っている大学生の将棋系ブログ。
主に居飛車党過激派向けの序盤作戦を網羅している他、
雑学医学数学物理自転車チェス等とりとめのない話題も…

※前回『神経なる紐にて天上の意思に辿り着くもの』


漫画化できたなら、きっとその分野に関しては全く理解できていないわけでもないだろう
…という謎の信仰に基づくこのシリーズ。

精確さが相当少し犠牲になるのは言うまでもない。



(※汗腺や平滑筋血管など副交感神経と被らない所にはコリン作動性の交感神経もある。あとβ3Rもある)


自律神経は状況に合わせて素早く戦闘シフトをとったり御飯モードに入ったりさせる神経系で、
無意識ながらも常時恐ろしく精密に動作している。(例えば立ち上がるだけでもすぐ働く)

交感神経の方にはα作用とβ作用という(一見似ているようで)全然違う二種類の派閥があり…
末梢を締めて血圧UPを図るノルアドレナリンと、
大元の心臓を働かせて全体の循環量自体を上げにいくアドレナリンとが人体内で使い分けられている。

しかし人類も中々偉いもので…
例えば徐脈性の不整脈には電気的なβ作用がメインのイソプロテレノールを使ってみたり、
喘息に対してはβ2レセプタだけを強く刺激して気管支の狭窄を和らげてみたりなど、
創意工夫を凝らしてその他にも様々なカテコラミンを使いこなしているようだ。。

(もちろん、アナフィラキシーで今にも死にそうな場合は今なお本家アドレナリンが最強なのだけれど)



(※後で調べ直してみると細胞内のNa濃度が全然違う…アカン…)


続いては、(心筋も含む)筋肉がAChで指令を受けてからどのように収縮し、戻るかについて。
今回の主役はNaちゃん・Kちゃん・Caちゃんの陽イオン3人衆と各々のチャネル(≒専用出入口)。

彼らがそれらを通じて自由という名の統制された挙動を繰り返すことで、今日も筋肉は動く。。
神経との差はCaが居て電位+を維持するか否かで…問題児Kちゃんの脱走癖すら想定の範囲内。

ちなみに、脱分極(最初のNaちゃんの大移動)の勢いは細胞間の孔を通じて隣り合う筋細胞にも伝わる。
そうやって連鎖するからこそ、筋肉は皆タイミングを合わせて一斉に収縮できるのである。


これら3種のチャネルとβ受容体を封鎖することで、
電気の流れを自在に操り心電図をイイ感じに戻そうというのがいわゆる抗不整脈薬
Vaughan Williams分類の「鍋喰っか(Na,β,K,Ca)」だ。

Naチャネルを遮断(Ⅰ群)するとQRSの幅が広がり、
Kチャネルを遮断(Ⅲ群)すればQT間が延びる
のも、こうして考えてみると直感的に判りやすい!
(Ⅰb<Ⅰc<Ⅰaの違いはついでに行われるKチャネル封鎖の度合いによるもの)

対するβ遮断薬(Ⅱ群)とCa拮抗薬(Ⅳ群)はいずれも房室間をゆっくり通行させる働き(PQ延長)があり
上のお方(洞結節)が無駄に頑張っちゃう時に効く。

ジゴキシンに代表される強心薬は更にややこしく…
迷走神経を内因性に刺激し脈をゆっくりさせつつ、
一方では細胞内のCa濃度を減りにくくするので心筋の収縮力自体はアップするという感じ。


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('14-07-30)
…だいぶ間が空いてしまった。
後半は腎とかぶる領域について見てみたい。

腎臓に入った血管は、糸球体という文字通り血管が糸玉になった場所で血液をタップリと濾過される。
そうして濾し出された液(原尿)は…

近位尿細管(必要な物質を再び回収)
ヘンレのループ(水を抜き、塩を抜く)
遠位尿細管(K+やH+など危険物を廃棄)
集合管(最後に水気とかを細かく調節)

の順でがっつり濃縮され、最低限の量に絞ってから尿として排泄されている。




その絞る作業を妨害するのが利尿薬で、上図でいうと青の膀胱マークで囲ってあるやつである。
(水色で囲ったACE阻害剤・ARBは降圧薬。サイアザイド系もどっちかといえば降圧目的で使われる)

絞りを甘くすれば当然尿量は増えて体液量が減り、血圧も(理論上は)下がる。
逆に水玉マークで示したホルモン達は原尿から塩or水を引き抜くので…尿量は抑えられ、血圧が増す。

特にレニン→アンジオテンシンⅡ→アルドステロンと連なる経路はRAA系と呼ばれ、
「ピンチで血圧が下がってきた時に、腎から漏れ出る液量を最低限に抑えて血圧をキープする」
という重要な役目を交感神経と共に負っている。


しかし、駆出率の低下が慢性的に続いていると
もう血液送るの疲れた」と心が叫んでいるのに
心ちゃんにはもっと大量の血が必要みたいだ!
と勘違いしたRAA系がせっせと作動し続けてしまい…

結果として却って心臓の負担を増やし症状がどんどん進行していくというお手本のような逆効果を生む。

慢性心不全に対して用いるACE阻害剤やARB、β拮抗薬、抗Ald薬には…そんな可哀想な心への
「そんなに頑張らなくてもイインダヨ!」という思い遣りの気持ちが込められているのだ。。



※Thousand Daysは医学的助言を提供しません


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