プロの世界とは恐ろしいもので…
ついこの前まで竜王だったはずの渡辺前竜王が、
藤井元竜王にフルボッコにされて2組降給となってしまった。
千日手局も現代
それ以上にこの指し直し局のインパクトは絶大だ。。

…48金寄
先手ゴキゲン中飛車を相手に無理やり居飛車穴熊に組もうとすると、大抵このような局面になるっぽい。
(ここまでで最大のポイントとしては…48銀の瞬間に74歩と突いて石田流を防いでおくことだろうか?)
私も以前よく採用していた作戦だが、
去年これで酷い目に遭って以来ほぼ封印している。
…とてもじゃないが私の力ではバランス(「隙のなさ」と言い換えてもよい)を保ちきれんと判断したのだ。
前竜王はここで94歩と備えず自然に72飛と寄った。
だが下手するとこれが敗着だったのかもしれない。。

72飛 66飛 62飛 95角 63飛 38金寄
94歩 84角
後手は66飛~65飛~85飛の筋を防ぐためにわざわざ64歩型で備えていたというのに、
それでもこの局面では66飛(~95角)が成立している。
このように84角と潜り込まれると、
後手の飛車角は身動きがとれなくなってしまう。
(私の経験上も、こうなってしまうと後手かなり辛い)
…それもこれもみな、王様を固めすぎたせいである。

45歩 56飛 44金 45歩 55金 59飛
65歩 52歩
後手には中央の薄みを衝きにいくより手段がなく、
先手はそれを逆用してト金(通称マムシ)を製造する。
この鍍金はいずれ後手に押し売りして銀将との物々交換になることが確定しており、
現状は実質「四枚穴熊v.s.二枚穴熊」ともいえる…
以下は何事もなく藤井元竜王が華麗に押しきった。
穴熊は将棋のあらゆるルールを
ただこのように悲惨な末路を辿ることも多いため、
いきなり級位者には勧めにくいという事情がある。
※弱小アマチュアの身で言えた口ではないのだが、
渡辺前竜王は夜戦になると若干 O☆NE☆MU になる傾向があるのかもしれない。。
(逆に、夜になると妙に元気になって意味不明な強さを発揮する行方八段のような人もいる)
~~~~~~~~~~~~
ところが、先手がノーマル振り飛車の場合は何故かこのような圧勝形にはなりにくいようだ。
矢倉-大石(順位戦C2最終局)は先手三間飛車から五筋の位を取っての愛穴熊となったが、
前述の将棋とは何かが致命的に異なる…らしい。

…74飛
具体的には後手の44歩が省かれており、一方の先手は66歩~65歩と突いている。
…この場合、後手は(例えばここで66角と受けられた時とか)いつでも54歩と動き出せるのが大きい。
上図の74飛は一見いかにも軽いジャブながら、
境界条件が完璧なのでこれでもう手になっていた。。

68飛 76飛 64歩 同歩 同飛 86歩
この86歩のような手の感触を「筋 (suji)」といい、
これがいかにもピッタリな継続手段で攻めが続く。
(同角には78飛成、同歩なら88歩、84飛にも87歩成 同飛 86歩がありいずれも捌ける)
対抗形の持久戦を学ぶ際には、
まずこのような右辺に金銀が全く存在しない形での攻撃パターンを多く知るのがてっとり早いと思う。
定跡的には古くなってしまった「羽生の頭脳」第4巻も、その点では大いに役立つ。

同角 78飛成 77桂 66歩
ただし実戦では、ここら辺の66歩みたいな若干欲張った手が通るか否かが勝負どころとなるようだ。
(67歩だと57銀で、先手の遊び銀を相手にしてしまう)
66同飛と取れば54歩や87竜に対する84飛が消え、
かと言って放置すれば超高速で鍍金ができる。
一旦68歩と受けておく手はあったような気もするが…よく判らない。

61飛成 67歩成 54歩 58と 38金寄 77角成
…この歩が通ってからはOEC先生の独壇場となる。
58トを利かせてからの77角成がまたピッタリの手で、
53歩成 86馬 42トには42同馬と取られてしまうのが切ないところ。

同角 同龍 53歩成 同銀 86角 同龍
同歩 56歩
そこで先手としては同角から再び86角と、龍銀両取りを掛けるよりないが…
ここで手順に5筋の歩が切れ、2枚目の鍍金を製造できるようになったのでもう龍なんて要らない子!
以下はこの浮いた銀も(オトリとして)見事に捌け、
しかも53飛成に75角が先手で入って電車道となった。
「捌きとは、死ぬことと見つけたり!」
~~~~~~~~~~~~
序盤から終局までをlinearに接続することを最大の目標とする私のような
穴熊はそれを実現しうる(と勘違いしうる)、数少ない戦型といえる。
Android携帯からの投稿