次世代への伝言 #138 第五章 市ヶ谷(4) 法廷⑦ | 少年飛行兵 と 私 第二幕〜Thoughts About Peace

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2014年、突然閉鎖したブログ「少年飛行兵と私」
特攻隊員だった「彼」の遺志を確かめた僕は、「少年飛行兵と私 第2幕」として新たな旅を始めます

第五章 市ヶ谷(4) 

【 法廷 】⑦

 

戦犯起訴状

極東國際軍事裁判所條例

 

 

では最後に「A級戦犯」という言葉について触れておきたいと思います。

 

東京裁判が開かれるにあたって、「極東國際軍事裁判所條例」というのを作って「どういう罪状で裁くか」を決めました。たとえるならば傷害罪で裁くのか、窃盗罪で裁くのか、ということと同じですね。条例はこのように定めました。

 

左に掲ぐる一又は數個の行爲は個人責任あるものとし本裁判所の管轄に屬する犯罪とす

 

(イ)平和に對する罪

即ち、宣戰を布告せるまたは布告せざる侵略戦争、若は國際法、條約、協定又は保證に違反せる戰争の計畫、準備、開始、または實行、若は右諸行為の何れかを達成する爲めの共通の計畫又は共同謀議への参加

 

(ロ)通例の戰争犯罪

即ち、戰争法規又は戰争慣例の違反

 

(ハ)人道に對する罪

即ち、戰争又は戰時中爲されたる殺戮、殲滅、奴隷的虐使、追放其の他の非人道的行爲…

 

この(イ)の区分の罪状で逮捕されたのは126人です。

 

第五條 人並に犯罪に關する管轄

(イ)(ロ)(ハ)の区分が見える

 

うち5人は逮捕される前に自殺、残った121人の中から容疑が固まった28人が起訴されましたが、大川周明が精神鑑定の結果被告から除外、2名が裁判中病死して判決を受けたのは25人。これがA級戦犯なのですが、なぜA級戦犯と言われるようになったかというと、

 

この

(イ)(ロ)(ハ)

という区分はもともとの英文の裁判所条例では

(a)、(b)、(c)となっていて

(イ)=(a)

で、条例の文中"class A"と表記されているため「A級」と呼び、その犯罪人なので「A級戦犯」となったわけです。

 

英語原文

右ページ左列中段

三つの罪にa、b、cが付されている

 

「イ類犯罪人」「イ類戦犯」「A類戦犯」よりも明らかに語呂がいいですよね。

 

 よく「A、B、Cというのは罪の重さではない」と説明されるのはこういう意味なんですね。

 

ちなみに死刑判決を受けた7名は(イ)類だけでなく、(ロ)類の罪でも起訴されていて、松井大将は(イ)類では無罪、(ロ)類の一容疑だけで死刑となりました。

 

さて、日本政府は裁判の正当性、事実認定、判決ほか全てを受け入れ、認めているわけですが、それによって何を学び、裁判後約80年の歴史の中で何を活かしてきたんでしょうか...