シンガポールが中国と海上演習を実施/昨年12月には米軍と共同訓練を実施 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

アメリカと中国が東南アジアで主導権争いを繰り広げるなか、シンガポールが2月24日、約5年ぶりに中国海軍との海上合同演習を実施したと報じられています。 



<中国との合同演習>
中国側の発表によると、両軍の艦船はシンガポール海峡の北東の洋上に集結し、演習によって「相互の信頼を構築し、友好を深め、協力を促進した」とする艦隊士官のコメントが添えられました。
またシンガポール国防省によると、シンガポール海軍からステルスフリゲート艦と哨戒艦、中国海軍から駆逐艦とフリゲート艦が参加して「追い越し演習」が実施され、両軍は操縦、交信演習の後、合同の捜索・救助シミュレーションを行ったとのことです。
そしてシンガポール国防省は、演習が行われた場所を「南シナ海南端の公海上」としています。

<アメリカとの合同演習>
シンガポール海軍(RSN)、米国海軍、米国海兵隊は、2020年12月に南シナ海とシンガポールのチャンギ海軍基地で実施された第26回協力海上即応訓練(CARAT)に共同で参加し、今回の演習では、大型艦船を用いた従来型の甲板作戦に小型水陸両用舟艇を統合した多様な訓練に焦点が当てられました。
南シナ海の公海における海上演習では、上陸作戦用輸送揚陸艦、ドック型輸送揚陸艦、エアクッション型揚陸艇、高速艇、ヘリコプター、無人偵察機(ドローン)などの両海軍の艦船と航空機を用いて、航空機と艦船の発進、捜索・救助演習、部隊別の戦術と操作、通信訓練などを実施しています。

シンガポールにとって安全保障における最重要国はアメリカですが、経済面における最重要国は中国であり、どちらかだけに寄せられない立場が透けて見えます。
実際に政治と経済の分離やツートラック外交などを主張するのは韓国のようなごく一部の国であり、そもそも韓国自体がアメリカと中国との間で揺れ動いている国の代表のようなものです。
過去記事[中国との関係を深化させる東南アジア諸国 親中国/脱中国の鍵は日本] にも書きましたが、中国と東南アジア諸国の経済的な繋がりは深まる一方であり、RCEPが発効すればその傾向は一段と強まるでしょう。


イギリス連邦に所属するシンガポールでさえ中国との共同軍事演習を行うほど中国の影響は強く、ベトナムなど中国との領海問題を抱える国を除いた東南アジア諸国においては一層強くなります。ミャンマーの軍事クーデターについても中国の関与が指摘されていますが、真偽はともかく中国が東南アジアにおける影響力を強めようとしているのは間違いありません。

経済面から東南アジアへの影響拡大を狙う中国に対して楔を打ち込む方策は、
①RCEPの主導権を中国から奪うか、そもそも発効させないという荒業
②TPP参加国を増やし、RCEPより高度な開放を進めてRCEPを有名無実化させる
という極めて難易度の高いものしか見つからないのが現状です。しかも②についてはTPP参加国であるシンガポールが中国との共同軍事演習を行っていますので、どれだけ拡大しても中国の影響を排除するのは難しいかもしれません。

(画像は産経新聞ニュースから引用)

最近の東南アジアを巡るニュースを見ると、自由で開かれたインド太平洋構想は中国の一帯一路構想の後手を踏んでいるように感じます。