半導体で“日台連合”実現か?/存在感を増すTPP | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

一週間前に半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が日本に新工場の建設を検討していると紹介しましたが、同社が2021年内にも茨城県つくば市に先端半導体製造の技術開発センターを新設し、日本の製造装置・素材メーカーと共同開発に乗り出す計画があると報じられています


工場については『日本に建設する新工場は後工程であり、日本は組み立て工場に成り下がった』等のネガティブな意見も散見されましたが、技術開発センターの新設については文句のつけようもないかと思います。

楽天証券チーフアナリストの今中能夫氏は、5Gによるスマートフォンの高性能化、そしてリモートワーク需要によるPCの高性能化ニーズの高まり等により「半導体市場は、2018年10月の過去のピークをそろそろ抜く。1年はかからない。抜いたあとどこまで上がるかは分からないが、かなり大きな半導体ブームとなる」と予想しています。


こうしたニーズから、TSMCの直近の売上高は10-12月期で過去最高、前年同期比で13%増と絶好調で推移しています。それにつれてTSMCの投資額も相当に増加しており、今中氏によると2021年の投資額は2020年の約170億ドルをかなり上回る220億ドルに達すると見られるとのことで、日本への投資もこの一環でしょう。


言うまでもありませんが、半導体は最終消費財ではなく中間材、部品に過ぎませんので、最終消費財として出荷されるまでに製品の売買が行われることになります。つまり半導体が消費者の手元に届くまでに異なる関税地域を通過すると、当然ながら関税がかかる場合があるわけです。
そう考えると、TSMCが日本に工場を建設する理由の一つとしてTPPの存在が挙げられます。昨年12月に台湾がTPP参加申請に向け加盟各国と協議中と報じられており、2021年中には具体的な動きを見せると予想されますが、中国の横槍もあり参加の可否は不透明と言わざるを得ない状況です。


TPPに加入すれば、少なくともTPP加盟国内については原産地規制によって排除されることがなくなり、非TPP加盟国に対して優位になります。逆にTSMCの競合企業(業界第2位はサムスン)の国家がTPPに加入すれば、劣位になります。
もちろんTSMC=台湾ではありませんが、韓国もTPPへの参加を検討しており、仮に韓国に先んじられた場合にはTSMCは厳しい情勢に追い込まれることになりかねません。そうした背景から、TSMCはTPP加盟国である日本で工場を製造することでリスクヘッジを行おうと計画しているのではないかと思われます。
もちろん台湾がTPPに参加できればそれが一番なのですが、中国による東南アジア諸国への圧力もあり平坦な道程にはならないでしょう。

日本はある意味では漁夫の利を得た形ですが、現状に甘んじるのではなく、友好国台湾の苦境打破に協力してほしいですね。